つぶやくふたり

talk about housing

A:志水さん、こんにちは。今日は太陽光の話です。この話題、楽しみにしてたんですよ。

S:そうなんですね。なぜ楽しみなんですか?

A:”東京都で新築戸建住宅に太陽光パネルを載せることが義務化される”というニュースを目にするようになってから、「太陽光ってどうなの?本当にいいの?」って聞かれることが多いんです。

S:なるほど。ごく一般的に言われるメリットデメリットは調べればわかることなので、少し違った観点からいろいろお話しできたらいいですね。

A:はい、よろしくお願いします。志水さんが、現時点で太陽光に思うこと、何かありますか?

S:うーん、太陽光はつけないと絶対損だ!って言われていますけれど、そこまで決めつけなくてもいいかな、というのが今の僕のスタンスかな。

A:おお、なるほど。
私は太陽光のメリットもよくわかりますけれど、蓄電池に関してはあれ?って思うこともありますね。

日中に発電した電気の残りを、売電するより蓄電しておいて、朝や夕方など発電ができないときに使うのがお得だと言われてますけれど、蓄電池って種類少なめで高価だなあ、と思います。
電気自動車に搭載されている蓄電池を利用するのが安価だと聞きますが、V2Hエンジンを搭載した車(V2H=「Vehicle to Home(車から家へ)」の略で、蓄電池に蓄えた電気を家庭の電化製品などにも使用できる、双方向充放電可能なシステム)で乗ってみたい車がない、うーん、って感じです。

エネチェンジさんのサイトよりお借りしました

S:蓄電の問題は太陽光発電のまだ弱い部分ですよね。蓄電を導入しないとすると、例えばご夫婦で在宅勤務などの生活スタイルの人には太陽光発電は向いてますよね。

A:確かに、、リタイヤ後のご夫婦とかにもいいですね。

S:朝食後に家族みんなが外に出て、夕方戻ってくるような家庭だと今のところは売電するしかないですねえ。

A:売電の価格が下がっていると言われていますよね。

S:売電の高価買取は、太陽光パネルを普及させるための国の施策でしたから、ある程度普及すれば仕方ない話ではありますね。エコキュートのように、深夜電力でお湯を沸かす設備もありますけれど、その深夜電力もだいぶ高くなってきてますよね。今までが安過ぎたんですけれどね。

A:まあ、原発が動いている前提で作られていた深夜電力ですからね、火力発電に頼っている今、価格は上がりますよね。

S:これから原発が稼働するようになるのか?とか、太陽光発電には自分一人では決められない問題が絡まってきますよね。

A:そうですねえ、志水さんが今お家を建てるとしたら太陽光発電は導入しますか?

S:僕は立場的に実験的な意味で入れてみたいなあと思いますね。在宅で仕事することができる職種ですので無駄にはならないかな?と。

A:なるほど。気になる蓄電池はこれからバリエーションが出てきますかね。

S:とは思いますけれどね。発電した電気を蓄電して使用、また次の日発電+蓄電するという短いサイクルで回せれば理想的な使い方ですね。

A:素朴な疑問ですけれど、蓄電してもその車が外に出かけたら、電気は買うしかないですよね?

S:もちろんそうですよ、笑

A:「今日は電気沢山使いたいんだから、車使わないで!」、みたいなやりとりが起こるのかなあ、そんなのはしたくないなあ、、、。

S:ははは、そういうやりとりが起きる家庭もあるでしょうね。

A:そもそも、家庭におけるエネルギー消費量は、意外にも給湯が一番多いですよね。

S:そうです。家庭によって違いはありますけれど、給湯が35%くらいです。お風呂、シャワー、手洗いのお湯です。

A:なんかいまいちまだそれが腑に落ちてないです。

S:家電と照明合わせて30%、暖房が20%、冷房になると5%以下、調理関係で5%と言われています

A:そうなんですよね、信じがたい。冷房が一番エネルギーがかかりそうな気がしてしまいます。

S:お湯と水の切り替えを1本の水栓で行うことができるシングルレバー水栓、これが知らず知らず給湯機を作動させていたりもします。

A:ふむふむ、私が小さい頃の家は、太陽熱温水器を屋根に乗せて、お風呂に使っていましたけれど、晴れた日はかなり熱いお湯が出ました。家族6人の給湯エネルギーを節約していたわけですね。
今もこういう機械ありますか?

S:ええ、僕も設計で使ったことありますよ。今の機械は進化していて、屋根の上にパネルを置き、そのパネルを太陽光で温め、内部に充填してあるオイルで熱を動かして水を温めます。この方法だと、屋根の上に大容量の水を上げずに、地上に水を溜めておくだけですみます。
昔のタイプは原始的で、水を屋根の上のタンクに上げて太陽のエネルギーで温め、必要な時に水を落として使うという方法だったでしょう?

A:そうそう、水上げしといてって頼まれて、よくわからず専用の蛇口をひねってましたね。太陽の力ってすごいよなあ、と思いながら。

S:この方法はすごく効率よく水を温められるんですよね。エコキュートの2倍効率が良いともいわれてます。エコキュートだと、前日夜の深夜電力で温めた水を、翌日の夜に風呂などに使うのでお湯が冷めるというロスもありますけれど、太陽光温水器は昼間の作ったお湯を夜に使うのでロスも少ないです。

またお日様エコキュートという考え方もあります。これは深夜電力ではなくて、昼間の太陽光パネルで発電した電力でエコキュートのお湯を作るという考え方です。これもロスが少なくてお得ですね。

A:なるほどね。違いがわかってきました。

S:余談ですけど、真空タイプの太陽熱温水器というのがあって、沸騰直前のお湯ができるみたいですよ。

A:すごーい。そんなこともできるんだ。一概に太陽光パネル一択ってしなくても良いんですね。

S:地域差も大きいですよね。湘南地域は晴天率が高いので太陽のエネルギーをなんらか利用した方がお得にはなりますよね。

A:地域の天候のことや、家族のライフスタイルなどを考えて、どのように導入するか決定した方が良いですね。あと、個人的にはデザインとの親和性も気になるところです。自分の家はお得に暮らせるから良くても、屋根一面太陽光パネルとか、景観の問題としてどうなんだろう?と思ったりします。

志水さん的には、もし太陽光パネルつけるかどうか迷っているんです、というお客様がきたらどうしますか?

S:どうしてつけたいのか?をきちんと聞きますかね。
「お得に暮らしたいから」というお客様であれば、収支の試算をきちんとして、「イニシャルコストはこれくらい、その後何年くらいで元が取れますよ」と説明しますね。
いまだに僕も分からないのは廃棄の問題です。30年くらいは動いてくれることは知られていますが、発電量は当初の85%くらいに減ります。その後どのようになっていくのかは前例がないから分からない。
「完全に発電しなくなったらどうする?」という疑問はわきますよね。発電できなくなっても載せておいたままにすれば良い、と今の僕は思いますけれど。

A:新しい技術ですから、未知数な部分はありますよね。メンテは必要ないのですか?

S:はい、きちんと施工してあれば特にメンテは必要ないです。住宅ビルダーの方々がYouTubeなどで言っているように、太陽光パネルはどう計算しても損はしない設備であることは事実です。あとはこれからの電気代の上がり方ですかね。

A:電気が貴重品になるかもしれないですからね。あとは災害リスクを考えて太陽光パネルを導入したいという考え方をされる方もいますよね。

S:ガスや水に比べたら、電気は復旧しやすいとはいわれてますけれどね。

A:数年前の台風で、近所の友人の家が3日間停電していたのですけれど、もう2度とあの思いはしたくないと話していますね。経験してみないと分からない部分がありますよね。

S:それはそうですね。

A:私がもし家を建てるなら景観を妨げない範囲で、太陽光パネルを載せるかな?
いや、太陽熱温水器載せようかなあ、両方載せるのもありですか?

S:できますよ、そういうお客様もいましたね。今はハイブリッドの商品も出ています。
災害用にパネル1、2枚分だけベランダに置くとかもできますね。

A:なるほど選択肢はいろいろありますね。

S:僕が声を大にして言いたいのは、太陽光を載せる載せないの議論の前に、その家の断熱気密をしっかりやって、かかる電力量をできるだけスリム化しておくということの大切さですね。
太陽光パネルを載せずに最初の1年を暮らしてみて、必要と判断したら載せることも出来る訳ですし。

A:そうですね、家の本体をしっかり作らないのに、太陽光の議論をするのは本末転倒ってことですよね。

S:災害リスクで言えば、3日間、家族が最低限のくらしが出来る発電量は発電機でも賄える程度なので、あまり恐れすぎるのもね、とは思います。
おすすめの本、「わがや電力」(https://yohoho.jp/project/solar-book-booking-form)があります。
電気のできる仕組みや、どの家電がどれくらい電気を使うのかなどが詳しく書いてあります。自宅で必要な発電量が目安としてわかると思います。

A:ありがとうございます。
私事ですけれど、東日本大震災で実家が被災した時、震度6の揺れで3日間ライフラインが止まりました。農業用の井戸から水を汲んで、備蓄のペットボトルと、カセットコンロで乗り切ったようです。家は新築したばかりで、家の中にいれば安心と思えたと言ってました。
電気はもちろんですけど、余震が来ても倒れない安心な家とか、水の心配をしないで済むといったことも大事ですよね。

S:確かにそれはありますよね。工務店さんの中には、床下に蓄熱と備蓄もかねて200本近いペットボトルや大型の水のタンクを常備されている方もいますよ。

A:そうなんですか!面白いですねー。防災という面ではそれくらいの安心感も欲しいです。
太陽光のパネルから防災の話まで、本当に話題はつきないですよね。今日はとりあえずこの辺りで終わりにしましょう。

S:では、また!

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