つぶやくふたり

talk about housing

S:こんにちは。今日はI邸の窓の手配でお世話になった、佐竹さんにゲストにいらしていただきました。
佐竹さんはYKK AP(当時の社名は吉田工業株式会社)に新卒で入社して以来、ずっと窓の分野でご活躍です。
佐竹さん、よろしくお願いします。

A:佐竹さん、よろしくお願いします。
早速質問ですけれど、なぜ吉田工業株式会社に入ろうと思ったのですか?

佐竹さん(以下SR):よろしくお願いしますね。
実ははじめからこの業界を目指していた訳じゃないのですよ。
就職活動中に別の会社に内定をもらって、そこで一旦決めてまでいたのですけれど、「海外で働けるような仕事がしたいなあ」という想いがあり、同級生に「ここならファスナーのシェア世界NO.1で、海外でも働けるぞ」と言われて。そんな理由で入社しました。配属されたのは窓サッシを扱う部署で、それからはこの分野一筋です。
YKK APを退職した後も、株式会社栗原で高性能で汎用性の高い樹脂窓K-WINDOWを開発したり、高性能住宅の普及活動をおこなったり、窓屋SATAKEとしてまだまだ忙しいです。

佐竹さんと。志水さんはオンラインで参加。

I邸の窓、日本と海外の窓の違い、窓の寿命

S:I邸は佐竹さんのネットワークで無事に取り付けることができました。僕が選ぶ窓はまだ誰もが扱う商品ではないので、結構苦戦しましたが、佐竹さんに入ってもらってからは安心して現場を進めることができました。納品の速さは本当にびっくりでした。

SR:いやー、ガラス搬入の現場に立ち会いましたが、何回やっても緊張します、もしサイズが合わなかったらどうしようってね。笑。

A:佐竹さんでも、そうなのですね。
現場で職人さんたちが部屋の中から外から指示を出し合いながら作業をしていたのが、トリプルガラスが入った瞬間、内側からの声が聞こえなくなり、すごい遮音性!とびっくりしました。
しかもペアガラスとトリプルガラス、倍厚みが違うのですね。驚きました。トリプルはもはや壁でした。

左側がペアガラス(2枚重なった状態)、右側がトリプルガラス(1枚)


SR:今回の入れたフランスのサンゴバンのトリプルガラスは、LOWEガラス4ミリ/アルゴンガス層16ミリ/ガラス4ミリ/アルゴンガス層16ミリ/LOWEガラス4ミリの合計44ミリなので、かなり厚みはありますね。竣工したらぜひお施主さんにお願いして、室温のデータを1年間とってください。
窓の性能は、メーカーの公表している性能値を確認することは不可能なので、室温の変化でしか確認できません、だから建てた後にデータをとることが大事です。

S:そうですね、やってみます。
今回I邸では、YKK APのトリプル樹脂窓と、サンゴバンのペアガラスとトリプルガラスの造作FIX窓、の3種類の窓を使いました。サンゴバンはガラスの性能、特に日射取得の性能が高くて選びましたが、ガラスの色もクリアで綺麗ですね。日本では同じような性能のガラスを作ることは難しいのですか?

SR:ガラスの原材料の鉱物が日本のものは鉄分が多く、そのせいでガラスが青やグリーンになりやすいとされています。ただ、今は海外製の原材料も多いので一概にそれが理由ではないかもしれません、技術力になんらか差があるのかもしれないですね。
あとはやはり莫大な設備投資をして新製品を開発することは難しい、というのが国内大手メーカーの考え方なのじゃないかな?と思います。
日本の窓の性能がここまで海外に遅れをとったのは、窓メーカーが、自分たちの製造ラインを大きく変更して、新しい高性能な窓を作ることに消極的だったという理由があります。

A:ずっと日本の窓が遅れているのは何故か疑問だったのですけれど、構造的な問題でもあるのですね。
一方で、海外の窓ってどのような感じなのですか?

SR:海外にはそもそもYKK APやリクシルといった全国を網羅するような大きな窓メーカーはありません、ハウスメーカーもないです。
サンゴバンのようにガラスを作る会社はあっても、それに枠をつけて窓にするのは、地元の小さな窓製作の会社です。
枠に使うビスなどの部品も市販の汎用品を使うので修理やメンテナンスも容易なのですよ。
日本だと、それぞれの会社でその製品にだけあう部品を作ったりするので、窓の交換や修理を難しくしていますね。

窓の寿命は長くて50年くらいだと、私は思っています。高性能住宅は100年近くの寿命があるので、交換をするということを前提に作らないといけないですよね。

S:今回の造作FIX窓は寿命の観点から見るとどうですか?

SR:かなり耐久性があると思いますね。ガラスが割れない限り大丈夫だと思います。下枠に水が溜まって結露を起こすことが一番の問題なので、水抜きの処理がきちんと行われていることが大事です。サンゴバンのガラスで造作FIX窓を製作したのは今回が初めてなのですが、性能の高さの割に比較的リーズナブルにできたのは意外でした。今後の参考にします。

S:それを聞いてホッとしました。
話は変わりますが、メンテナンスの観点で言うと、海外製の窓のように釘ヒレがついていなくて壁にポコっと設置できるようなタイプの窓は日本ではないのですか?

SR:高度経済成長期に、家をとにかくたくさん建てる方針になり、サイディング壁が採用され雨仕舞いが楽な釘ヒレのついた窓が普及しました。それが今の窓交換を難しくしていますね。内窓をつける以外、壁を壊さないと窓を交換できない。
それをなんとかしたいなと考え、僕が株式会社栗原で開発したK-WINDOWは、窓枠の形状やガラスを選べるようにしました。
リノベーションで窓を新しくするときに、外壁を壊さずに交換するアイディアも考えました。リプレイス工法と名づけて試作品を設置するところまでやってます。
大工さんたちの腕が良くないと成立しない工法なので、なかなか普及できてないですけれど。

S:これからの時代を考えると、より簡単に高性能な窓に交換できるのはとても大事ですよね。

A:我が家もそのような工法があるのならトライしてみたいな、と思いますね。内窓をつけることも考えたのですが、周りの枠が太くなり景色の見え方が変わって、窓本来の魅力が半減するような気がします。
景色や光を楽しんだりする窓本来の良さを損なわない形での、性能向上リノベーションの需要はこれから高まるように思います。

SR:私は問題の解を探しにいくのが好きです。ご相談いただけたら、知識やネットワークを総動員して解決方法を探しますよ。

S&A:ありがとうございます。心強い!

高性能住宅と窓の歴史


A:話を変えて、新住協(新木造住宅研究協議会)と佐竹さんの関わりについても伺ってよろしいですか?

SR:協会ができた1980年代に、長野で高性能住宅を作る大工さんを育成する勉強会をしていた頃からです。当時は寒い長野であっても、高性能住宅の作り方を知っている人はごくわずかで、気密の高い家に住んだら窒息すると信じている人が、建築関係者にもいました。その勉強会で北海道の新住協さんに協力をお願いしたのです。

A:その頃から今に至るまで、流れが変わったな、と思ったのはいつぐらいなのですか?

S:2010年前後からですかね。気密性を表すC値でしか住宅の性能を測れなかったのが、この頃からQ値、UA値といった基準ができ、北海道だけで普及していた樹脂窓が、本州でも知られるようになりました。
それまでは窓メーカーは、北海道という小さい経済圏だけを相手に、樹脂窓を作っていました。ただ性能は海外性に負けているのは明らかだったので、各社が低価格競争をしていたわけです。そのため技術開発も設備投資もおぼつかない状況でした。
そんな状況を打破するべくYKK APがAPW330を発売したのが2009年。低価格でも性能の高い樹脂窓が一気に普及し始めました。

A:確かに私が20代の頃、高性能な窓といえば、海外製の木製サッシ一択だったような気がします。海外製なので価格もそれなりにしていました。

S:鹿児島の工務店のシンケンスタイルさんは海外製の窓をずいぶん早くから使っていましたね。

SR:鹿児島は環境が特殊で、火山灰の問題がありますよね。普通の引き違いのアルミサッシだと灰が室内に入ってしまうのだと思います。

S&A:なるほど!

SR:今は普通に皆さんが樹脂窓を使うようになり、やっとある程度のところまで来たな、という感じです。個人的にはAPW430のペアガラスがあるといいなと思います。性能が高く、価格もこなれて良い感じになるはずです。APW330のペアガラスとの違いを出すために作られていないですけれど。

A:窓って断熱性能も大事だけれど、日射取得がどれくらいか、ということも大事だと、今回の物件で理解できました。

S:太平洋側沿岸部の冬の豊かな日射を活用しない理由はないです。日射を取得するならペアガラス、日射を遮蔽するならトリプルガラスと使い分けました。

SR:きちんとシミュレーションしているからできることですね。
そうそう。日本だと樹脂ペアガラス→樹脂トリプルガラス→木製サッシの順に価格が上がりますけれど、窓先進国のヨーロッパだと、その上にアルミ+樹脂+アルミの窓があります。

A:へー、そんなのがあるのですか。

SR:アルミの良さは耐候性、耐風圧性などの高さです。樹脂はアクリル塗装で耐候性を高めていますが、塗装が剥がれたらどうする?という問題は残されています。今後の開発に注目ですね。

S:ハウスメーカー主導で進んできた日本の住宅業界、少子化や経済の低迷で新築住宅の着工件数は減っています、どうなっていくのでしょうか、住宅分野の各方面の方とお付き合いのある佐竹さんのご意見お聞かせください。

SR:10年前からは考えられないくらい、地域工務店さん同士の交流が活発になりましたよね。北海道と関西の工務店さんが勉強会をするとか、時代は変わったなあ、と思います。あとは地域工務店の2代目、3代目たちにも期待してます。学校で専門的に建築を学んでいる若者が多く、基本的な知識や海外の情報などにも敏感です。
こういう流れや人の中かから生まれる新たな動きが楽しみですね。住宅業界はあまり先行きの明るくない産業として見られがちですけれど、どんなに世の中がバーチャルになってもリアルなすまいは必要ですから、悲観はしてないですよ。




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