つぶやくふたり

talk about housing

資産価値のある家イメージ

志水龍(以下S):今日は住宅の資産価値というテーマでお話ししたいなと思ってます。

会津亜紀 (以下A):よろしくお願いします。でも戸建て住宅の資産価値って難しいですよね。建てた瞬間が一番高くて、減っていく一方かと。マンションの方が資産価値は落ちにくいと聞いたことがあります。

S:そうですよね。でもその考え方もこれからは変わると思います。 私たち「日日と」の考える標準仕様でつくられた家はどれくらいもつと思いますか?

A:50年くらいでしょうか?

S:いえいえ、60年以上は十分大丈夫で、きちんとメンテナンスをすれば100年近くもつと思います。

A:100年!我が家だと子供の世代も超えて、孫の世代まで行きますね。日本の家がそこまで長もちするという想像がつかないんですが、、、、 

S:京都のような特殊な町なら別ですが、身近に築100年の家に住んでるような方はなかなかいないですもんね。少しきつい言い方になりますが、戦後の日本人は世代ごとに、何千万円もかけて家を建て直して来て、世界的に見て住宅貧乏なんですよ。
建築基準法のレベルが低いことや地震、気候風土で家が腐ってしまうことなどで平均寿命が30年と言われています。
一方、海外の先進国の家の寿命は100年ぐらい。メンテナンスにお金をかけて資産価値を維持しています。結果的に人々は住宅ローンの返済に追われたりせず、生活を楽しむことにお金をかけることができています。 

S:うーん、確かにイギリスに長く住んでいた日本人の友人が、ロンドンのフラットは値下がりしないので資産として買った、と言っていたし、オーストラリア人の友人も、本国では、みんなDIYで住宅の価値を上げるべく工夫していると聞いたことがあります。
私がヨーロッパ映画などを見て憧れてきた、暮らしの豊かさはすまいのそのものの質にあったということですよね。。。。ショック。私のように何も知らない日本人の方多いんじゃないかなあ。
だから資産価値の高い家づくりって、具体的にどのようにするべきか検討がつかないっていうのが本音のような気がします。 

S:僕は資産価値の高い家づくりは6つのバランスだと思っています。
耐久性、耐震性、快適性、省エネ、メンテナンス性、自分の好きな意匠と仕様という項目です。
耐久性=気密や防蟻はしっかりと
耐震性=構造計算で耐震等級3をきっちりクリア
快適性=エアコン1〜2台程度で一年中快適な室温を維持。ヒートショック、アレルギーなどの健康リスクが低い
省エネ=太陽光パネル、パッシブ設計などで自然エネルギー最大限に生かす。 将来にわたって光熱費を抑制
メンテナンス性=メンテナンスが容易な仕様と設計
自分の好きな意匠と仕様=これはお客様の趣味になる部分が多いですが、できるだけ普遍的なものを目指す
この6つの項目を高いレベルで満たしていくこと、それがその家の資産価値になっていくと思うんですよね。 

A:志水さんのお話は良くわかります。私も家を建てるときにはこの6つをきちんと満たしたいな、とは思います。ただ、こういう家って、決してお安いお買い物ではないはずで。実際、戸建ての資産価値が本当に担保されるかわからないのに、たくさんのお金をかけて、そこまでする意味はあるのかな?ってちょっとうがった見方をする自分がいたりします。その辺りはどうなんでしょうか? 

S:今までであればそういう意見もあったと思います。でも衝撃的なニュースが去年飛び込んてきました。2050年までに2010年比で二酸化炭素の排出量をゼロにするというカーボンニュートラル宣言です。
いよいよ住宅の二酸化炭素の排出量の規制が段階的に強化されていきそうです。京都議定書の目標値も住宅分野は達成されていなかったので、より真剣に取り組むことを求められています。 

A:家の中で使う冷暖房などにも規制がかかるということですか? 

S:冷暖房を使うことに規制がかかることはないけれど、二酸化炭素の排出量が多いと、住宅に関する税金が高くなる可能性があります。企業などにはすでに課税され始めている炭素税といわれるものですね。
家は電気を多用しなくても生活できる作りにすることを求められるはずです。できるだけ少ない電気で暮らせる家=なるべく火力発電所のお世話にならない家というのはこれから価値のあるものになってくるのです。 

A:うーん。電気代に加えて税金がプラスされたら。今よりも冷暖房費を節約しなくてはならなくなるかもしれませんね。
うん?もしかして、電気代も上がりますか? 

S:電気代も2011年以降10年間で1.4倍くらいになりました。
これからは年間3%ぐらいで微増していくと言われています。ちなみに4人家族の平均的な光熱費 が25〜30万円くらいで、新築の家で太陽光パネルを乗せて発電すれば、そのくらいの電力量は賄えたりもします。
別のコラムで詳しく話そうと思いますが、結局は最初に良いものを作っておいた方が、後々かかる光熱費などを抑えられ、家計にお得になる可能性が高いです。 

A:徐々に上がっていくから気づきにくいですが、確実にエネルギーを使う行為は高価なものになっていくんですね。
今の状態が未来も続くわけではない、と思って、長い目で物事を見ないといけない、、知らなかったなあ。
それにしても太陽光パネルは偉大ですね。自分で使う電気は自分で賄うというのは、なんかカッコイイです、笑。
規制強化や光熱費の値上げを見越して作られた、火力発電所のお世話にならない住宅というのは、それ以外の住宅と比べて差別化できるんですね。 

S:はい、そうだと思います。先に述べた、6つのバランスがハイレベルで達成された家というのは30年後に「壊さなくていい家」として価値が出てくると思います。
消費者が賢くなって、そのような家に価値を見出せるような社会になっているのが理想的です ね。

A:うーん、30年でダメになる住宅が量産されたのも、実は消費者の無知が作り出したものかもしれませんしね。本来、日本の家というのは今のような短いスパンで壊すものじゃなかったように思います。良い材料を使った家を建てて、代々大事にメンテナンスしながら使っていくというのがしっくりしますよね。 

S:そうですよね。興味があれば、再生エネルギーなどに関する規制などの総点検タスクフォースの様子がYouTubeで見れますよ。河野行政改革担当大臣による審議会で、大臣自身が新潟を 訪れた時の暖かい家での感激を述べています。
印象的な言葉に「ゲームチェンジです」という言葉がありました。
業界の慣習やしきたりを変えるような流れを作りましょう、ってことです。 

A:流れは確実に変わりつつあるということなんですね。この流れを知っているか、知っていないかでは家づくりへのスタンスも変わりますね。
今日も大変勉強になりました。ありがとうございました。 

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