つぶやくふたり

talk about housing

妻のトリセツ参考画像

A:志水さん、こんにちは。今日は趣向を変えて最近読んだ本の内容から家について考えてみたいと思うんです。どうぞよろしくお願いします。
私が取り上げたい本は『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』という本。これ、一昨年くらいに流行った本でして、今更ながら読んでみたんです。結構深かったです。

私は家づくりに関わるようになってまだ日は浅いですが、男女の理解って結構違うなあと思うことも度々あって。志水さんのご経験で男女のお客様それぞれの印象とかってありますか?

妻のトリセツ参考画像
2冊一気読みしました

S:そうですねえ。男性より女性の方が鋭いツッコミを入れてくるという印象がありますね。家の性能の話なんかをしていて、男性は「なるほど」とちょっと斜に構えて聞いているときに、女性は「それ、いくらかかるんですか?」みたいに聞いてくる。

A:女性の方が現実的なんでしょうね。
この本の著者の黒川さんは脳科学者の視点から男女の違いを説明しているんですけど、男性は太古の昔は狩りが仕事だったので、全体像や空間を認識するべく、引いた視点で物事を見るのが得意、女性は村で集団で子育てをしながら生きてきたので、じっと集中して小さなものを見続けることが得意、とありました。子供の顔色とか、手仕事とかまさにそういうことで。目の前にあるものを見るって、つまり現実的ってことなのかもしれないですね。 

S:ただ、女性って腑に落ちたらすごく協力的ですよね。

A:仲間と認識したら、そうかもしれませんねえ。志水さんがこういうことを伝えたいんだと理解したら、それをうまく家族に伝えたりするのは、女性はすごく得意なはずです。よく言われるように共感力は女性の能力ですので。

S:なるほどね〜。

A:この本によると、女性は、脳のストレスを共感とおしゃべりで解決しているそうで、男性は、問題解決と沈黙でストレスを解消しているそうです。家づくりのことを考えたときに、妻があれこれ悩みながら夫に相談するという構図はよくあると思うのですが、この時夫は「妻が悩んでる→問題がある→解決しなければ」という展開にしない方がいい時もあると思うんですよね。妻はただ悩んでいる(けど楽しい)ということを共感してもらいたいだけかもしれないので。

S:なるほど、家づくりをしようとする男性は、そのことをちょっと気に留めといた方がいいかもしれませんね。真に受けすぎない方がいいこともあるということで。。。

A:私は、男性は問題解決と沈黙で脳ストレスを解消している話がすごく気になっていて、やはり男性には書斎が必要なのではないか?と考えるんですよね。コロナ禍の前までは、広々とした大空間にみんなで暮らす、みたいなコンセプトの設計が主流だったと思うんですが、テレワークが普及した今、やっぱりパーソナルスペースが必要なんではないか?と、我が家の生活や友人の話などを聞いて考えるようになりました。

S:家族であっても自分のテリトリーを侵食されるのは嫌なもので、それが夫婦の間の亀裂の原因になるのであれば、1畳くらいのスペースでもいいから、好きなものに囲まれていてそこにいると幸せを感じる、というような場所は作りたいですよね。

個人的には長年設計に携わっていると、最近インテリアの好みが男女間で差がなくなってきたなあ、と思いますね。その代わり好みが強くなってる気がします。

A:そう言われると確かにそうですね、女性は可愛らしいものを好むといった典型的なことは今はあまり多くないですよね。また、SNSで素敵なインテリアを紹介している人たちの画像を見ると嫌いなものは絶対に家に入れない、というような強いポリシーを感じることも多いです。

かくいう私もそうだったかもしれないけど、子供が3人ぐらいになった時点でそれは諦めましたね。

S:結構ね、変わるんですよね人間って。僕も安藤忠雄大好きという学生自体からは考えられないほど、今の自分は変わったと思います。3回か4回転換点があったんじゃないかな?

生活スタイルも、家族構成も、インテリアの趣味も、常に変化するということを意識して家の在り方を考えた方がいいですよね、本当は。若い時はそこまで思い描けないものではありますが。。。その時は自分の感性にドンピシャな家を作ってもそれが20年30年住むとどうなるのか、少しだけ思いを馳せて欲しいなあと思います。

家って長く存在するものなのでね、時間軸は絶対に必要なんです。

A:私もそうでしたが、小さなお子さんの子育て真っ最中の奥様たちはよく広いリビングが欲しいといいます。でも、子供たちが巣立ちその広いリビングで過ごすのってどういう気分なんだろうと思うんです。

S:どうしても家づくりって多岐にわたるし、時間軸も長いので、自分の興味のある分野だけとか、今という時間だけしか見えなくなりがちなんですけどね。できたらこんなことがあるんだよという広い地図を示せたらなあ、と思いますね。

僕もこの業界に関わって30年以上経ってやっと見えてきた地図です。その地図が見えたら、もしかしたら男女の理解の差は無くなるのかも知れないと思います。

A:最近思うのは家って元気な時に建てるけれど、元気じゃなくなった時に住むのもその家なんだよなあ、と感じますね。元気な時にみんなに自慢できるような素敵な家を建てることは面白いことだけれど、だんだん家族が減っていき、体力や気力が落ちてきたときにも住むのもその家なんですよね。
そういう時にも無理なく寄り添ってくれる家がいい家なのかな、なんてことを考えますね。

この話をしようと思った時に、そもそも論になるんですけど、家って何?どうしてみんな家を建てたいの?って考えました。答えは出ないんですけどね。なんでしょうね。

S:家もそうですけど、土地もそうですよね。その環境に長い間身をおくという選択をするのは結構勇気がいることなんじゃないかなー、と思います。高度経済成長の時代はね、いい土地に、立派な家、高級な車を持つことが『夢』というような考え方がありましたけれど、今の時代はもっとしなやかに暮らしてもいいんじゃないかな?と思ったりします。
例えば、多拠点居住って自分としてはありだよなあと。もちろんメインとなる拠点の場所は必要ですが。

A:多拠点居住が前提だとすると、拠点の家もそんなに広さは必要ない、となりますよね。その場所に住まなくなったら売却なり、賃貸に出せるとかそういうことも考えた方がいい。

S:そうそう、家もそのくらいライトに考えて、ひらりと身軽に生きたみたいですよねえ。お金の環境や社会の環境など制約は色々あるんでしょうけど。

A:固定観念の家じゃない暮らし方ができたらいいですよね。私は実家には帰らないと思っていましたが、あの全てが知り合いみたいなコンパクトな世界も悪くないんだろうなあと時々思うんですよね。

S:新しい風は吹いていますしね。常に色々な視点を持ちながら家づくりをしていきたいですよねー。

A:まとまらないですけど、家やくらしについてこれからも柔軟に考えていきたいなと思います。またよろしくお願いします。

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