つぶやくふたり

talk about housing

このコラムはカビの発生メカニズムと、新築住宅を建てる際の注意点をまとめてあります。
既存住宅での除湿対策を知りたい方は「諦めるしかないの?鎌倉のカビ問題を考えてみるpart2」も併せてお読みください。

A:最近、鎌倉に住んでいる人や移住を考えている人達に、鎌倉での暮らしの中で気づいたことや、困っていること、知りたいことなどのアンケートをとってみたんですけれど、一番気になるポイントが「湿気」と「カビ」でした。

鎌倉は谷戸が多く、湿気がこもってカビが出やすいので、みなさんその辺りは苦労されているようです。今回は、この話題で話していきたいなと思っています。

そもそもカビってなぜ出るんでしょう?

S:空気中には至る所にカビの胞子が存在しています。その胞子たちが成長するのに最適な環境になると目に見えるカビとなって繁殖していくんです。活発に繁殖しやすい環境は、温度が20℃から30℃で、相対湿度が80%以上の時と言われています。まあまあ、高湿な状態です。

A:温度と湿度、栄養はどうなんでしょう?

S:栄養ももちろん必要ですね。ただカビは何でも栄養にしますからね。栄養はどこにでもあると考えた方が良いでしょうね。

A:確かにそうですね。極寒の地で住み続けられたりしたらカビとは無縁なんですかねえ。でも冬にカビの話題をそんなに耳にしないのは室内が寒いからですか?

S:うーん、どうなんでしょう。今はそこまで寒い住宅も多くないですし。でも窓枠の下あたりが結露で黒ずんでいたりするのを見かけますよね。あれは黒カビです。

A:冬でもカビは出るのですね。。私が小さい頃はそんなに耳にしていたかな?と思うんですけれど。カビが体に悪影響を及ぼすみたいに言われるようになったのはわりと最近のことなんですか?

葛原岡神社からの眺め。山は美しいけれど多湿な気候になりやすいです。

S:昔の家はそもそも隙間も多かったですし、漆喰とか無垢の木材とか素材自体に調湿効果があるものが使われていたので、適当に湿度を出し入れしてくれていたと思うんですよね。

A:なるほど、カビの問題がクローズアップされるようになってきたのはビニールなど調湿効果がない建材が多く使われ出した時期と関係あるのかもしれませんね。。実家に古い蔵があったのですけれど、夏でも冬でも体感的に温度湿度が一定だなと感じたことは覚えてますね。冬なんかは意外にそれほど寒くなくて、少し湿度もある感じなんですよね、でもカビが大変だ、みたいな話はなかったですね。

カビは体内に取り込むとアレルギーの原因などになるから有害である、って言うのが定説ですよね。鎌倉だと家の外でも中でもカビとの戦いではあるんですけれど、家の外壁などにつくカビと、内部にできるカビでは何か違いはあるんですか?

S:家の中のカビは体内に取り込みやすくなるので影響は大きいですよね。外壁のカビは北側の日当たりの悪い壁面や、海沿いの家などで見かけますけれど、あれ自体が人体に影響するということは考えにくいでしょうし、そのカビが材木を腐らせているわけでもないんですよね。

A:室内のカビの良くあるパターンは、室内の隅の埃とか下駄箱の中の埃がカビることだと思うんですけれど、室内のものがカビているということは、壁の内部もカビているという話を聞いたことがあるんですが、そう考えた方がいいんですか?

S:そう考えた方がいいと思います。。悲しいですが。見えてはいないけれど壁の中もカビています、ほとんど。

A:新しい家は最新の技術で建てているからカビないんだろうな〜と思うようなお宅でも意外とカビるという話を聞くんですね。一体それは何をすればカビなかったのかなあ?と思うんですけれど。これから家を建てる人に、ここだけは気をつけた方がいい、みたいなのってありますか?

S:そうですね。これには歴史がありまして。

冬がとても寒い北海道で家を建てようとした時に、暖かくしようと壁の中にしっかり断熱材を入れて暮らしていたんですが、そこで大事件が起きたんです。

北海道は寒いので、暖かくする為に大量の熱エネルギーが必要で、エアコンでは不十分で石油ストーブをガンガン焚いて部屋を暖めていたんですが、その温かい空気が壁の中に入っていった時に、壁の中で「あるしつらえ」をしていなかったために、温かい空気が壁の外側の冷気に触れてしまったんです。壁付近で北海道の外気に近い冷気に触れることで結露を起こしたんです。

その結露の水が凄くて、断熱材が結露の水分を吸うことで重くなって、壁一面に張っていた断熱材がその重さに耐えきれなくなって下の方に落ちる。ぐちゃぐちゃになった断熱材が下に溜まってですね、最後にはその断熱材にナミダタケというキノコが生えて、そのキノコが家の構造材を腐らせてダメになった。という今となっては笑い話になっているような歴史があります。

この歴史からの教訓は、温かい空気をとにかく壁の中に入れない、それが大事だと言うことなんです。

A:キノコ、、笑えないけど笑ってしまう話ですね。

いわゆる気密と言われるものが、温かい空気を外に出さないようにするしつらえ、施工と考えて良いですか?

S:そういうことになります。壁の内側の気密ですね。壁の外側で気密を取る方法などもあるんですけれど、壁体内結露(壁の中の結露)に関しては壁の内側でバリアを作って気密をとることが大事になります。

A:ではこれから家を作る方は、ハウスメーカーなり工務店さんにきちんと気密を取った施工をしてください、とお願いすればやってもらえるものなのですか?

S:はい。ただ、できる会社とできない会社があると思います。できる会社さんならお願いしてやってもらうべきだと思います。

A:できない会社もある。。ということはその家の壁の中ではカビが生えていると考えた方が、、

S:その可能性は大ですね。みなさんそうはおっしゃいませんけれど。

A:はあ、、、はあとしかいえないんですけれど、そうなんですね。断熱についてはハウスメーカーさんが大きく謳っているように見えるんですけれど、気密についてはそれほど大きく扱われていない印象があります。それはやっぱり施工が難しいとか、手間がかかるとかが理由なんでしょうか?

S:そうですね、この施工はすごく手間がかかるんですよ。だから嫌がるところが多い。ひたすら隙間を作らないように埋めていくというか、塞いでいく作業が必要なんです。

A:でもカビさせない家を作るためには、気密の施工をしっかりやってくれる業者さんを選ぶということが大事なんですよね。

S:そうですね。あとは、カビだけでなくて、壁体内結露が原因で腐朽菌という木を腐らせる菌が発生してきてしまいます。腐朽菌は木造住宅の構造を弱くしてしまうわけで、、新築当初の耐震性能を保てないといった事態も起きてしまいます。

A:結露は窓の掃除が大変、とか言ってる場合じゃないのかもしれないですね。聞いてよかったのか、、悪かったのか、、でも知らなかったら自分で判断することすらできないですからね。

S:施工会社さんの中にも、このような原理原則をわかってない方もまだ結構います。

A:お客さんも、気密の大切さをわかった上で、気密施工を選ばないのであれば、それは個人の自由だと思いますけれど。耳に心地よい言葉だけを信じてしまって選んでしまうと後々大きく変わってくるということですよね。

S:だと思います。

A:わたしも志水さんと勉強させてもらうまで、このことは知りませんでした。本当に多くの人に知ってもらいたい話だと思います。

↓気密についてYouTubeにまとめてありますので、よろしければご覧ください。

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