新築時にはわかりにくい将来のメンテナンスコスト。本当に高い家って?
会津亜紀 (以下A):志水さん、先日の「素敵な家づくり基礎講座」も勉強になりました。私が志水さんから色々伺って勉強させてもらうようになって、皆さんに伝えなきゃならないなと思うのは、高い家、安い家の概念です。
私は建築費4,000万円で建てた家を高い家、2,000万円で建てた家を安い家と単純に思っていたんですけれど。。 家には最初にかかるイニシャルコストだけではなくランニングコストも必要になり、そこの金額がかなり膨大だということがわかってきました。 建築費って実は氷山の一角なんですよね。
志水龍(以下S):そうなんですよね。
住宅のランニングコストの主なものは光熱費、メンテナンス費、保険です。これらが長年住んでいく間に累計でどれくらいになるか、2種類のライフサイクルコスト(建物や製品がつくられてからその役割を終えるまでにかかるトータルの費用)の資料を用意しました。
A:私はハウスメーカーがこんなに頻繁に有償メンテナンスをしているとは思いませんでした。10年に一度は大きなお金が動くメンテナンスが入るということですね。これは安心材料になるんですよね?
S:10年に一度、これだけどこかを直していれば、そうそう大きな問題は出ないのも当たり前です。そういう意味では安心ですが、、。
ハウスメーカーは10年に一度の有料のメンテナンスをすることによって、その先の10年間の家の安全性を保証してくれます。ちなみに経年よる劣化は保証の対象外で、一度そのメンテナンスをパスすると、その後保証は受けることができないシステムになっています。
A:実際みなさん、こんなに頻繁にメンテナンスしているんでしょうか?
S:金額的に難しくなって、メンテナンスをしなくなり、いよいよピンチの症状が起きたときに地元の工務店さんや大工さんに泣きつくという話は時々聞きますね。
A:ですよね、自分たちの代は頑張って直したとしても、子や孫といったその次の住まい手がそれほどの金額をかけながら住み続けるかもわからないですからね。
詳しく表を見ると、特に金額の差が出てくるのが「外壁+目地」の項目ですよね。
S:そうです。ハウスメーカー系の外壁は主に窯業系サイディングというものです。簡単に言えば、 セメント板に水が染み込まないようにコーティング材を塗ったもの。安価で施工がしやすい、防火面で優れているということで広く普及してます。ただこの素材は板と板との間の目地のコーキングがまず劣化しやすい。年が経てばコーティング材の塗装も剥げたりしてきます。2階建てならその都度足場をかけてこまめなメンテナンスが必要になります。
窯業系サイディング自体は特殊なものではないのですが、ここにハウスメーカー独自の技術や色などが付加されていると、メンテナンスもそのハウスメーカーにお願いするしかないという流れになってきます。
A:最初は安価に導入できる窯業系サイディング、、なかなか怖いですね。
S:一方、Bの表ではどこにでも手に入る材料で住宅を作った場合を想定しています。例えば、外壁は杉板で、張り方は押縁縦張りです。これはもっともメンテナンスが簡単な張り方なんです。
直射日光などで板が痩せてきたら取り替えれば良いので、このくらいの金額で維持できます。器用な方なら DIYで直せると思いますよ。杉板張りは経年変化で木の茶色からグレーに変化するのも楽しめる良い素材です。
A:我が家も築25年のレッドシダーの外壁をちょこちょこ直しながら住んでいるのでわかります。うちの外壁は横張りで、下の木材に上の木材が少し重なる張り方ですが、縦張りの方がいいのですか?
S:良い質問ですね。押縁縦張りは外したい材料を一枚だけを外すことができますけど、亜紀さんの家は南京下見張りとか鎧張りとか言われているタイプで、外すためにはそのすぐ上の木材を浮かせたりしないといけないのですよ。
A:押縁縦張りは合理的なんですね!
エアコンも設置台数が少ないので交換費用も安く済みますね。こういう設備の入れ替えって積もれば結構な値段になるんですよね。
S:そうなんですよ。
きちんとした品質の今の住宅の躯体の寿命は、設備の耐用年数より数倍長いです。設備の入れ替えは絶対に起こります。その時にできるだけ安価に済ませられたら、私たちはそのお金を他の部分に回すゆとりができますよね。
A:家を残された次の世代も、設備を一新してもそれほど費用がかからないなら、わざわざ新しく建て直したりせずに、愛着を持ってその家に住んでくれそうですよね。良い循環だなあ。
S:「イニシャルコストが高い」と言う理由で候補からはずず前に、長いスパンで自分がどのような暮らし方がしたいのか、きちんと考えてみてほしいですね。
また、ライフサイクルコストは各社言うことがまちまちです。自分で計算してみることをお勧めします。