つぶやくふたり

talk about housing

屋根イメージ

会津亜紀 (以下A):志水さん、第3回目の「素敵な家づくり基礎講座」拝見しました。
わからないことがあったので質問してよろしいですか?

志水龍(以下S):もちろん、どうぞ。

A:この図なんですけれど、、、片流れの屋根の雨漏り事故が多いようなんですけれど、片流れの屋根にはしないほうが良いってことなんですか?

保険事故の屋根形状
保険事故物件の屋根形状(2016年9月末までの累計)

S:そういうわけではないんですよね。まず屋根の形状については下の図を見てくださいね。片流れの屋根はここ最近急速に増えている屋根です。

屋根の形状
年度ごとの屋根形状
屋根形状の種類と施工棟数比率(城東テクノ株式会社のHPより引用)

A:最近よく見かけますよね、おしゃれな感じがします。

S:そう、都会的な感じですよね。この屋根の形は大きく張り出さないので、狭小住宅とか建売の分譲戸建てなど、都会の住宅が混み合った地域に多い傾向があります。 分譲戸建てのような住宅は、予算もギリギリで作っているため、細かいディティールまで詰めていなかったり、下地の工程を端折っていたりなど、時として施工の荒さが出やすいんですよね。それが片流れ屋根で問題が起きやすい理由かな、と思います。
片流れ屋根でもきちんと軒とケラバ(外壁から出ていて雨樋がついてない方部分)を伸ばして建物の壁や窓を雨風から守るように設計して、丁寧に施工してあれば、雨漏り問題は起こらないはずです。

A:なるほどー。片流れ屋根が良くないというわけではないのですね。では、ベテラン設計士さんからみて、おすすめの屋根の形というのは何かありますか?

S:やはり切妻屋根で、大きく屋根を被せてあげたいですねえ。
昔から住宅設計では「屋根はシンプルにかけましょう」と言われてるんですよ。ふわっと建物に乗せるようにね。

A:切妻屋根ですか。どんな国にも昔からある屋根の形ですよね。
寄棟もそれほど無理がないように私には見えるのですが、これはどうして1番のおすすめにはならないんでしょうか?

S:全ての屋根には、通気という空気の通り道を設けて、空気を下から上にできるだけ負荷がかからないように真っ直ぐにスーッと流したいのですが、寄棟はこの通り道をしっかり確保するのが難しいのです。

A:ああそうかー。棟筋が四方に伸びているのが通気の妨げになりやすいんですね。

S:そうですね。あと予算のことを話せば、屋根に付帯してる雨樋などもお金がかかります。2辺に樋がある切妻より、4辺に樋を回す寄棟の方がお高い屋根になります。
屋根の種類と価格で言えばおそらく、一番お安いのが片流れ、切妻、寄棟、陸屋根の順になると思います。

A:陸屋根、高いんですね。意外!

S:陸屋根は、こまめなメンテが必要ですからね。そのメンテコストなども含めて考えています。

A:屋根は耐久性が大事ですもんね。お値段、性能、耐久性などを考え合わせると切妻屋根が1 番良いってことなんですね。

S:そうです。素材の耐久性だけで言えば本瓦もいいと思います。
ですが一般の屋根と比較すると重くなるので、構造を強化する必要があります。またこれからは 太陽光パネルを設置することも多くなってくると思うので、設備との親和性も含めて選択していきたいところです。

A:最近はよくガルバリウムの屋根も見かけますが、それはどうなんでしょう?

S:ガルバリウムの屋根は耐久性、軽さ、コスト面で優れています。ただの鉄板ですのでね。夏の表面温度は目玉焼きが焼けるくらいの70度だと言われたりしますね。

A:確かに、、うちの家は築25年のガルバリウムの屋根ですが、2階は夏は暑いです。。。

S:そのような場合は、屋根色を工夫するとか、天井断熱をしっかり行うなどで十分対応できます。天井の断熱を行えば、ガルバリウムの弱点である「雨音が気になる」という問題も解決されま す。

A:そうなんですね。屋根ひとつとってもいろんな技術が関わって繋がっていくんですねえ。ありがとうございました。

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