つぶやくふたり

talk about housing

A:今日で3回目のパッシブデザインのお話になりました。前回は日射取得、日射遮蔽、断熱に関して伺ってきて、今回は風と昼光利用です。よろしくお願いします。

S:よろしくお願いします。

A:本題に入る前に、少し質問して良いですか?こう暑くなってくると、私は冷房をつけて、寒くなってきて消すを繰り返すんですけれど、高性能住宅の冷房ってどんな感じなんですか?

S:冷房をどのタイミングでつけるかは住む人の好みになるとは思いますが、高性能住宅の冷房は、いわゆる冷房が嫌いな人がイメージするものとは違う気がします。冷風が直接当たる不快感が起きないんですよね。夏のトンネルの中を想像してみてください、ああいう雰囲気の冷たさです。

A:なんとなくひんやりして、汗が引いていくような感じかあ、良い表現。

S:そう、冷輻射の効果によって空間全体が涼しいのです。実際に高性能住宅の壁を触ってみると、ひんやりと感じることが多いと思います。冷房の設定温度が27〜28℃であれば壁の温度もそれくらいです。
それに対してあまり断熱が効いてない家というのは、壁や天井の温度が高く、輻射熱を発しています。

A:我が家の2階の天井ですが、去年の夏、断熱材をひく前にサーモカメラで見たら40℃近くて赤く色がついてました。おーっ、こんな高い温度なのかと思いましたね。

サーモカメラで夏の天井を撮影
2021年8月5日 午後2時ごろ 天井付近は38.6〜39.2の表示。

S:そうですよね。人間が感じる温度というのは自分の周りにある空気の温度だけでなく、遠くにある天井、床、壁の温度を感じています。空気の温度が20℃で壁等の温度が40℃だったら体感温度は20℃より高い30℃近くになるわけです。

A:空気は冷たいけれど、どこからともなく、なんとなく暑いという感じがあるのはそういうことか、、、

S:そうなんです。それは壁や天井からの輻射熱を感じているのです。
中間期にどの程度冷房を使うかという話からは、ちょっと話がずれましたけど。

A:いえいえ、冷房の使い方は人それぞれということはわかりました。高性能住宅になったらやたら冷房と暖房に頼るようになったというのも、なんか違う気がしてどうなのかなあ、と思った次第です。

S:僕は冷房をつけながら窓を開けていても良いと思うんですよ。特に鎌倉は湿度の高い地域なので、除湿のためにエアコンをつけるという考え方も大いにあると思うので。

A:冷房をつけながら窓を開ける、、そうなんですね。それは普段の生活でしてないので思いつかなかったです。

S:冷房しながら開けるというのは、贅沢と思うかもしれないけれど、太陽光発電を導入していれば冷房にかかる光熱費はゼロですしね。冷輻射の涼しさと、風速を感じる涼しさはまた違った良さがあるのでね。

A:わかります。私も風を感じる涼しさが好きなので、これを感じられないのはもったいないなと思います。特に湘南は昼間は暑くても夕方からは良い風が吹いてきて、この涼しい風が大好きなんです。その風を楽しむために開けたり閉めたりするのはありだということですね。

S:風を入れるために朝や夜に窓を開けて室温や湿度が多少変化したとしても、閉めればすぐに快適な温湿度に戻りますしね。
より風を感じたい場合、卓越風(ある地域、地方に、ある期間で最も頻繁に現れる風向きのこと)を利用して設計する考え方もあります。ただ卓越風は百葉箱の中で計測された数値で、住宅街の風は周囲の建物の建て込み具合でだいぶ変わるので、必ずしも正解にならないという場合もあります。

また、重力差換気と言われる、周りの建物に影響されない風の起こし方というのもあります。方法は家の中で一番高いところにハイサイド窓、北側や東側の涼しい場所の地面に近い部分に地窓をつけること。
地窓から地面に近いひんやりした空気を取り入れると、上昇気流が起きて高い窓から室内の暑い空気が逃げていきます。こういう風は周りの環境に関係なく作れます。
エアコンを常時つけるのが嫌な方は、エアコンをつける前に、この方法で暑い空気を逃しておけば、より涼しくなるのが早くなりますね。防犯の問題がクリアできれば夜開けたままでも良いと思います。

A:それは気持ちよさそうです。いろいろ伺うと、パッシブデザインの風の利用は、環境に左右されがちな卓越風を利用するより、室内に上昇気流を起こす方がしっくりする気がしてきました。

S:一言で風を利用するといっても、方法や考え方はいろいろあるということは理解しておいて欲しいですね。

A:最後に昼光利用についてですが、これはなるべく日中は太陽の明るさを利用して過ごそう、といった意味ですよね。

S:はい、そうですね。極力電気を使わずに過ごすという考え方がベースですからね。ただ、建築家によっては陰影を重視する考え方の人もいますし、住む人でもあまり明るいのは苦手と思う人もいて、好みの分かれるところではありますね。

A:必要な部分だけ明るければ良いという考え方の人もいますよね。

S:こうしなければいけないという基準があるわけではないので、自分の感覚で選べば良いと思いますね。

A:パッシブデザインは本当に自由度が高い考え方なんですね。5つの考え方を知った上で思うのは、自由度が高いからこそ、自然とどう向き合って、どんな暮らしがしたいかというのは自分なりに考えておいた方がよさそうということです。家づくりが始まってからの話がスムーズになると思いました。

S:はい、そうですね。僕は日射遮蔽だけはかなり注意深くやった方がいいとは思います。

A:環境も世界情勢も変わっていきますからね、、、。今後50年100年後を見越すと、温暖化をいかにエネルギーを使わずに乗り切りるかというのは本当に大事になってきますね。

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