つぶやくふたり

talk about housing

A:志水さん、今日は前回の続きで「小さく建てて豊かに暮らす」のケーススタディプランNo.2ということでお願いします。

S:はい、前回と同じ4間×4間(1間=1.818m)の家を想定してあります。それぞれの家族の暮らし方でプランが変わることをお伝えできればな、と。

A:楽しみです。今回想定したご家族も4人家族(夫婦+小さな子供二人)。景色の良い葉山の住宅街に少し広めの土地を見つけたという設定です。

30代前半のご夫婦
夫婦それぞれ在宅で仕事をする
人を家に呼ぶことが多い、夫が料理を振る舞う。
DIYが得意
使いやすいキッチンと、景色を楽しめることが希望
土地面積は190㎡ 57坪程度

ざっとこんな感じです。

S:おおらかで開放的な家族の雰囲気と、景色を楽しむということから、僕が考えたのは2階リビングのプランです。
この辺りは山並みが低いので、2階の窓から十分山の稜線を楽しむことができます、このメリットを生かしました。海も見えたら最高ですね。

小さく建てて豊かに暮らすプラン

A:2階リビングってこの辺りの地形には良いですよね。

最近お仕事で2階リビングのおうちに伺ったのですが、その開放感に驚きました。山の間からちらっと海が見えたりして、1階では楽しめない景色があるんです。そして周りが建て込んでいても気にならない。見えてる、見られているストレスが無いって本当に心地よいな、と。

S:1階リビングのレースのカーテンをいつも閉めているお家を見かけますが、カーテンをいつも閉めるくらいなら2階リビングにして開放感を楽しんで欲しいな、と僕は思いますね。2階リビングのデメリットを考えても、開放感の方が勝ると思うんですよね。幸いにも海も山もある環境、遠くの景色を自宅の借景にしてしまいましょう。

A:広くゆとりのある土地なら1階リビングもゆったりできますけど、あまり大きくない土地に立てる場合は隣地との関係性が気になってしまいますよね。よく言われる2階リビングのデメリットは、、、

歳をとったときに階段の上がり下りが大変
子供がリビングを通らずに個室に入ってしまうので顔を合わせない

とか、かな?他に何かあります?

S:買い物やゴミ出しのたびに上がり下りがあるとは言われますね。買い物は難しいですが、ゴミ出しは2階のバルコニーにゴミの一時置き場を作ることで、ある程度解決はできると思います。歳をとったときの話と子供が顔を合わせないの問題は、その家族によって違うような気がしますよね。
ちなみにですが、歳をとったときに、1階にキッチンをおろしてくる大きな改装があるかもしれない、と考えながら僕はデザインしています。

A:すごい。。確かに、歳をとられても、階段の上がり下りが運動だと思って楽しんで頑張る方もいるでしょうし、改装するのもアリですよね。
子供とのコミュニケーションの件は、そこまで会話がないとしたら、それは別次元の問題だと思います。

親としては防犯的な意味でも2階リビングの方が安心かな、と思うときがあります。小学生ぐらいになって一人で留守番している時など、外から覗かれたりする心配がないので。

S:プライバシーの確保という点では、2階リビングに軍配が上がりますよね。
あと、構造的にもメリットがあるんです。
1階は2階を支えるための柱や壁が必要になり、大空間を作りにくいのですが、2階リビングであれば1階は個室が多くなるのでバランス良く間仕切り壁や柱を配置することになります。2階は大きな空間を作りやすいです。

A:おお、結構いいことづくめ、、、。2階からプランを見ていきますね。

2階プラン
小さく建てて豊かに暮らす ケーススタディNo.2

S:人をお招きするのが好きな家族、ということで景色の良い2階にキッチン、パントリー、ダイニング、リビングを広めにプランニング。ダイニングは作り付けのベンチを置いて大人数の来客にも対応できるようにしています。

キッチンは一段下げて、タイル張りかコンクリートモルタルで仕上げ、水拭き掃除がしやすいデザインを考えています。キッチンが一段下がっているので、ダイニングに座った人と目線の高さを合わせることができます。

A:なるほど。コンクリートモルタルなら、ステンレスの業務用キッチンとかも似合いそうですね。キッチンの入り口にあるのは作業台ですか?

S:そうです。食器を収納したり、大勢で料理をするときなどの作業台になります。ダイニングテーブルは10人ぐらいが余裕で座れるようにエクステンションで広がるものを入れたいですね。調理をする人、テーブルで食事をする人が賑やかに会話ができると思いますよ。

A:私も、今もし買うなら用途に合わせて広がるテーブルがいいです。2人暮らしのときに買った1600㎜×900㎜の木のテーブル、今となっては家族5人でぱんぱんですから。

S:キッチンの勝手口がバルコニーに面しているのでゴミなどはここに保管できます。このまま外階段で階下に回るのも楽しいかな、と。

A:またしても志水さんの作る中間領域の魅力が溢れています。ワクワクする外階段で降りると、物干しがあり、外シンクがあり、お風呂があり、バーべキュースペースがあり、アウトドアに便利な収納があり。楽しいことだらけのスペースですね。
1階の玄関周りもいいですねえ。この少し回り込んで玄関に向かうところ、家に帰ってきてまず一番嬉しいポイントですね。

1階プラン

S:駐車場からのアクセスとは別に歩くのを楽しめる小径を作りました。
少し余裕のある広さの土地だったので中間領域ではいろいろ遊ぶことができましたよ。土地の活かし方は、この部分の使い方で決まりますからね。土地を目一杯楽しんで欲しいですね。

買い物をして駐車場に車を停めたら、外の物置に設置した業務用の冷蔵冷凍庫に食材をストックして置くのもありかな、と思っています。

A:それすごく便利ですね。お客様が多いと、家庭用冷蔵庫では不安になる時ありますからね、笑。
子供が小さかったり、仕事をしていたら買い物に行く頻度はできるだけ減らしたいので、ありがたいです。
1階には和室もありますね。

S:これは主寝室のスペースを想定してあります、ベットと違って、空間の有効利用ができますね。庭に出るための待機スペース、来客の荷物を置いたりできます。着物を着るときや、お習字などの和のお稽古事にも使えますね。

A:和室があったら便利なのに、と思う瞬間は生活の中で時々あるんですよね。
ウッドデッキとの繋がりも縁側みたいな感じで懐かしいですね。大人になってから思い返すと、自分も縁側で遊んでいたのをよく覚えています。農作業の合間の祖父母とおやつを食べたり、摘んできた草花で何かを作ったり。そういうのが実は一番の家の思い出かもしれないです。

S:人間って家の中だけの生活では、やっぱり満足できない生き物なのでしょうね。この辺りの建ペい率/容積率は40%/80%ですが、この基準だからできる中間領域の豊かさだと思いますよ。

A:あ、そうかー、そういうことなんですね。鎌倉では建ぺい率の低いエリアが多いので、ある程度大きな土地でないとゆったりとした建物を作れないのかと思っていたのですが、中間領域を工夫することで魅力的なプランができるっていうことか!すごく勉強になります。

S:1階子供部屋はごくごくシンプルにしました。成長に合わせてDIYやIKEAの家具などでで部屋を作っていけば十分だと思いますよ、笑

A:うちもそう、笑。長男は中学生くらいから部屋のインテリアにこだわるようになり、あれやこれや試行錯誤してますね。我が家で一番綺麗な部屋です。
少し話を変えていいですか?お客様が多いと、泊まっていく、、という方もいるかと思うんですけど。笑

S:そう、それは考えてました。屋根の形状を片流れにして、小屋裏を作ったらどうだろう?と。

A:その手があるんですね。小屋裏って延床面積には入らないんですよね?

S:高さが1.4m以下、広さが下の階の面積の半分以内なら延床面積には入りません。この家の場合、2階の広さが約50平米ですので小屋裏は25平米くらいはいけますね。
一つ注意しないといけないのは、小屋裏を作るにもお金が必要になる、というところです。大体普通の階の半分くらいの予算は見ておいた方がいいと思います。

A:なるほど。そもそも予備の部屋ですし、予算を抑えるためにもラフに作っておいて、DIYでお好みの空間を作るのが良さそうですね。最初からきっちりとできている家も素敵ですが、自分好みに考えながら空間を作っていくのもいいですよねー。私は自分で色々試行錯誤したい派なので特にそう思います。

S:そうなんですよね。僕は住む方に使い方を強いる空間を作るのはあまり好みではありません。僕たちの手を離れたあとも、工夫しながら自分らしいくらしを作っていって欲しいなと思います。
ラフに作っておけば、建築費用を節約することもできますしね。
予算が潤沢になくても、そういった工夫しだいで素敵なくらしはできるはずで、そのためにどうしたらいいのか?と考えるのが設計士の本領発揮の部分だと思うんですよ。

A:実際のプランを見ながら、住む人の暮らしを想像するのはとても楽しかったです。中間領域でここまで家って変わるんですね、すごいですねえ。機会があればまたプランの話をさせてください。

関連記事一覧