つぶやくふたり

talk about housing

A:今日は広いリビングは必要か?というテーマでお話をさせてください。なぜこのテーマを選んだのかというと、私自身がずっと広いリビング必要派だったんですけれど、数年前に子育てのフェーズが変わったあたりで、本当に必要なのか?と疑問を抱くようになったからなんです。

S:具体的にはどんなことがあったのですか?

A:うちは3人子供がいるのですが、子供が赤ちゃん〜小学校低学年だと、眠る以外の大体全てのことが25畳くらいあるリビングダイニングで行われていました、ご飯を食べて、遊んで、片付けをして、勉強して、本を読んで、テレビを見てみたいな感じで。
でも上の子が中学生、一番下の娘が小学生になった頃ですかね。部活だ勉強だと兄が忙しくなって個室にいるようになって、下の二人もテレビの大画面でゲームなどしていたのが、iPadで各々のことをするようになってきて。。あれ?リビングのスペース余っていない?と気づき出したのがこの頃でなんです。

S:なるほど。なんとなくリビングががらんとしちゃう感じですね。

A:程なくしてうちは今の一軒家に引っ越ししたので、リビング部分は前より狭くなりました、笑。5人家族で集まって、なんとなく近いなと感じるくらいの広さ。今はまあこの辺りで快適かな、と思います。

でも、初めての家づくりを行うお客様と話すと、一番最初にリビングは20畳以上は欲しいです、というような希望がよく出てきて。自分の体験談も含めて、どう伝えれば良いかなーと迷う日々。

S:広いことには越したことないのでしょうけど、リビングの広さにこだわっていると、この地域ではなかなか見合うような広さの土地も出てこないですねえ。

昔の日本には茶の間があって、そこがリビングの役割をしていました。
茶の間にはブラウン管のテレビがあって、テレビを家族みんなで観るということが一大家族行事で、笑。そのブラウン管テレビが大画面液晶テレビに変わって、大画面をよりゆったり贅沢に見るために、広いリビング、ソファなどが置かれてきたんじゃないかなと思いますね。

A:広いリビングは大きなテレビを見るために必要だった?!複雑な気分になります。現実的な話ですけれど、家族みんなで同じテレビを見るのは、今の我が家だと1週間に1度あるかどうかぐらいです。それも短い30分くらいの番組で。昔はずいぶん子供たちとアニメとか映画をみていましたが、最近は一緒には見ないなあ。

S:ここ数年で映像コンテンツのプライベート化が進みましたよね。お子さんが成長してきたら、それぞれが好きな映像番組を好きなツールで見るって普通なことなんじゃないかな。

A:テレビ中心文化がほぼ終焉を迎えた今、リビングって何をする場所なんでしょう?

S:僕はリビングで何をするのか、したいのかの情報整理が必要かな、と思います。全部洗い出して考えたら、実は玄関とリビングが親和性が高くて、それらをくっつけて土間リビングを作る、とかいうアイディアも生まれたりします。

A:おお、なるほどー。そこで、自転車好きな家族は自転車をいじったり、日曜大工を一緒にしたりするのは、豊かな思い出として心に残りそうですね。
家は家族のエネルギーの充電場所だから、その時々の家族の嗜好に合わせてみんなの会話を誘発する仕掛けがきっと大事ですよね。

S:リビングもパブリックスペースにドーンと広いのを作るのではなくて、プライベートスペースに小さくて居心地の良いファミリーリビングを作り、子供に個室が必要なタイミングではその小さなリビングが子供室にもなったりとか。可変性を持たせて無駄のない空間を作った方が、時間軸で考えた時には有効だと思いますね。

A:ホームパーティをしたいから大きなリビングが欲しい、という方もいると思いますが、子供たちがいつまでも大人のホームパーティに付き合ってくれるわけじゃないですからね。個人的には大人の集まりを催すやや大きめのダイニングと、その時に子供たちが、大人に気を使わず好きなことができる、小さなファミリーリビングが今は欲しいかなー。

S:話は少し変わりますが、広いリビングを1階にもってくると建物の耐震性は弱くなりがちなんですよね。

A:そう、そうでしたね。先日話しましたよね。リビングは日射を取るために窓の割合が多い上に、広くすると柱や壁が少ない空間になってしまいます。

あと、吹き抜けリビングも、2つで1つのセットのように不動産広告などでは語られることが多いですけれど、志水さんと設計の話をするようになって、実は吹き抜けってリビングに無くてもいいんだなあ、と腑に落ちました。

S:冷暖房をよりよく効かせるための吹き抜けでれあれば、階段室だっていいんです。
リビング⇨家族が一緒にゆったり素敵な時間を過ごす場所⇨みんなで過ごす場所なら贅沢に作りたい⇨吹き抜けがあると広くリッチに見える、という理由で、吹き抜けリビングが生まれたと思うんですけれど、ここも一度よく考えてみないと。そもそも、僕らはリビングでゆったり過ごしているのか?とかね。
まあ最近はコロナ禍の影響で家にいる時間も増えていますけど、だからこそ過渡期のような。
みんなでリビングで過ごすより、小さくてもパーソナルなスペースの充実の方が求められている気がします。

A:うーん。コロナ禍の前だと、たまにしか家族が揃わないから、リビングがゆったり素敵な時間を過ごす場所だったのかもしれないですけど、最近のように、四六時中一緒にいるとね、笑。

S:一回作ってしまうと変えられない家よりは、家族で工夫しながら変化を加えていく家の方が、何が起きるのかわからない時代には良さそうですよね。

A:あと、これは私の個人的な意見ですけれど、素敵な家として完成されたものよりも、家族で試行錯誤しながら住みこなしていく家の方が面白いなと思います。自分が中古住宅ばかり選んできたのも、そういう理由だったのかもしれません。

広いリビング問題って、何が正しいって答えがあるわけじゃないんですけれど、話していて思ったのが、リビングを含めた家づくり全般の話と深く関わっているのが、子供の成長という時間軸ですよね。
知り合いの不動産屋さんが、「土地から家を建てるお客様の多くが、お子さんが小さいタイミングなので、子供室はどうするか?というような子供に関する話題に終始することが多い。間取りって、何を、どのタイミングを基準にして考えたらいいのだろうか?」ってことを話していました。

S:子供の成長って大体20年で、常に変化していくものですよね。その中で本当に個室が必要になるのは10年ぐらい。

当たり前ですが、個室を与えたら、子供が独立して家を出たあとはそこは空き部屋になる。それを踏まえた上で、自分達の家庭では子供とどう関わっていくのか、きちんと話し合ってほしいと思うんですよね。これもリビングと同じで正解はないと思います。

A:多くの家庭ではお子さんが独立した後に、夫婦で過ごす時間の方が長いですからね。何となくみんながそうしているから、ではなくて、先々の住まい方まで話し合って決めていくことなんでしょうね。

答えは出ない話題ですが、皆さんの家づくりの参考にしていただけると良いなと思います。

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