つぶやくふたり

talk about housing

リビングの採光CG

A:志水さん、今日は志水さんのプランニングの手法について伺わせてください。どうやって住宅のプランが出来上がっていくのか、とても興味があります。

S:わかりました。ではまず最近僕がプランニングした物件からその手法を解説しますね。北はマンション駐車場とマンション、東には2階建賃貸アパート、南と西には隣地の住宅がギリギリまで建っている、そんな立地をイメージしてくださいね。広さは60坪です。

A:広さは余裕がありますけど、ずいぶん立て込んでいますね。

S:そうですね、唯一北西方向は抜けていて遠くの山並みが綺麗に見えていました。どんなに欠点が多くても、敷地の良いところを見つけるというのがプランニングでは大事なところです。その上でお客様の要望を重ねていきます。

このお客様は車2台分の駐車場(縦列駐車NG)、24畳以上のリビング、吹き抜け、明るいBBQスペースを庭にとりたいということでした。周りに住宅が密集している中、どうやって視線をカットしながら明るさを取り込むか、それが設計上大きなポイントになりました。

A:なるほど。家の中の明るさはとても気になりますよね。

S:僕は日照ソフトを使って春夏秋冬の太陽の動きをシミュレーションすることにしています。周りの建物のボリュームから影がどのように影響するのかをかなりリアルに知ることができます。夏の日中の影、冬の日中の影、こんなに違うんですよ。

スケッチアップ
夏の日差しシミュレーション
夏の12時ごろの日差し(ピンク色の部分が敷地、北側にあるスペースはマンション駐車場)
冬の日差しシミュレーション
冬の12時ごろの日差し

A:真夏のギラギラした日差し、冬の柔らかな日差しが想像できるくらいリアルですね。

S:これで、この敷地の日当たりを検証することができました。夏の日当たりは確保できるけれど、冬の朝や夕方早い時間は周りの建物の影で、室内の奥までは光が届きにくいです。冬のためにも大きな窓である程度の日照を確保する必要性があるということが立証できました。

次は建物のボリュームを決めていきます。まずごく普通に敷地の真ん中に総2階の建物を配置してみました。でもこれだと要望であった庭がうまく作れない。BBQなどするのであれば特にプライベート感が欲しいですからね。では、ということでボリュームは変えずに、建物をL字に配置してみました。

プランの詳細
プラン詳細

A:なるほど!これだと庭のウッドデッキががちゃんと取れますね。駐車場も停めやすそうな感じ。

S:ウッドデッキの広さは10畳ぐらいですね。室内からウッドデッキへの出入りする南面の開口は大きくして、リビングにも明るい日差しが入るようにしています。良い眺望がひらけている北西の踊り場には大きな窓を配置して、外の景色を取り込めるようにしています。

A:周りに家が密集しているような場所だなんて想像できない、開放的な空間!植栽も効果的ですね、木漏れ日の中でウッドデッキてくつろぐイメージができます。そして、この土地の長所だった部分は、景色として家の中に取り込んでいるんですね。

リビングの採光CG

S:そうなんです。北側はマンションからの視線が気になるので極力大きな開口はとっていません。子供部屋の窓も小さく採光のための窓を開けただけです。これだけでは足りないので吹き抜け側からも明かりを取り込んでいます。

A:キャットウォークから子供部屋に向かうところが可愛らしいです。内装は随分モダンですね。志水さんってこういう内装もするのですね。

S:お客様がモダンな感じを好まれていたので、内装はこんな感じにしています。打ち合わせが進んだら、より落ち着いた感じの内外装に仕上げていこうと思っています。僕は和風も好きですし、モダンなデザインも好きなのです。本当は何か得意分野を持った方がいいのかもしれませんが。

A:いえいえ、このいかようにもデザインできるというのが志水さんの最大の強みなんじゃないでしょうか?デザインする住宅の振り幅が広いんですよねえ。すごいなあ。話は戻るのですが、日照ソフトを使ったシミュレーションはどんなハウスメーカーでもやっていただけるのですか?

S:ハウスメーカーさんの家はシンプルな四角形の形をしていることがほとんどなので、わざわざ日照ソフトを使って検証などはしないと思いますね。建築士の中でも使う人、使わない人様々です。僕は使える技術はできるだけ使って、お客様に安心してもらいたいなと思いますね。

A:どれだけ平面上で設計者とイメージを共有できるかが、安心感につながると思うのでこれはありがたいですね。あと、窓の重要性というのを今回のお話でとても感じました。光を取り入れる、だけでなく、景観を取り入れるという役割もあるし、外観の意匠にも大きく関わっていますよね。断熱などのハードの部分とも大きく関わっているし、面白くて難しい部分だなあと思いました。

S:窓のお話だけで、また別のコラムができるくらいの話題があると思いますよ。次の機会に話しましょうね。

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