最近、間取りはそれほど重要じゃないと思うのです
A:おはようございます。つぶやくふたりで話すのは1ヶ月ぶりですね。
この間、愛媛に行ったり、換気の勉強をしたり結構忙しくしていました。
S:そうですね、亜紀さん、また色々理解が深まったんじゃないですか?
A:今日のテーマを最初「家事のしやすい動線ってどうなんだろう?」と決めたときは、まだ素敵なプランに結構意識があったんですけれど、、最近、テンション低めになっております、笑。
S:ハハハ、亜紀さんがプランに意識が向きにくくなったのは家作りにはもっと大切な要素があると気づいたからですよね。
A:そうです、断熱を効かせるために気密をしっかりとること、機械換気で空気を綺麗に保つことなどで、私たちが普段すまいに関する悩みとしてあげているようなことを、科学的に解決することができるんだと、最近しっかりと腑に落ちました。
そうすると、まずはそういう問題解決に気を配って、次に考えることがプランなんだと気づいたんです。
今日のテーマである家事動線についても、お施主さんがそこを重要視するからクローズアップされている感があるなあ、と思います。家づくりってプランに以外にも考えることがあって、自分に合ったプランをあーでもないこーでもないと考えて力尽きてしまうのは本当にもったいないなと思います。
S:いわゆる今の日本の家づくりって、女性主体の打ち合わせになって、旦那さんがお金を出すというような構図がありますよね。まだまだ昭和的というか。
そこで「女性の関心のポイントはここ!」とハウスメーカーや工務店が注目した点がやたら深掘りされてしまって、他のことが置き去りにされてしまっている感があります。そこさえ満足なら奥さん笑顔、みたいなキャッチコピーがあって。
A:ですよね、なんか、馬鹿にされてる感じしますね。。
S:最近作らせていただいた鎌倉のとある土地のプランのことになりますが、プランニングの基本的な考え方としてまずあるのは、すまい手の暮らし方、大事にしたいことをヒアリングして、お気に入りのスペースをその土地の一番良いところに持ってくるということかな、と思います。
終の住処にしても、子育て世代にしても、部屋数というのはそんなに問題ではないと思います。将来何が起こるかわからないわけですし、子供部屋は3畳で良いという風潮も最近はあります。実際広い子供部屋が数年後使われなくなっているのは、みなさんも自分の実家とかで見覚えがあると思います。
A:子供は二人のつもりだったけど、三人目を授かって計画が狂った、と言っている友人がいました、笑。
S:よくありますね。何度も言ってますけれど、長いスパンでプランを考えることはすごく大事です。
打ち合わせでは、必ず広さの話が出ます。絶対に35坪以上の建坪が欲しい、とかは誰もがまず言うことです。けれど、性能を50年後を見越したものにすると価格が上がってしまい、予算は無限にあるわけではない。
そこで考えて欲しいのは、広さは生活の質に直結するのか?ということです。鎌倉だったら地震対策や湿度対策をしっかりしておくことが生活の質に関わりますよね。それは広さとは関係あるのか?
広さが小さければ、建物の価格を下げることができますよね。
A:まとめていただきましたね、笑。本当にそうです。
Youtubeを見てると、有名な住宅系の発信者の方が「子供部屋は3畳がいい」と言い、別の方が「独立心を養うための広さがある個室が良い」と言ってたりします。「ファミリークローゼットが玄関横にあった方がいい」、「いや、プライバシーが大事だから各部屋にクローゼットがあったほうがいい」とか、そんな議論もあります。
いろんな意見がありすぎて、全部聞いていたら翻弄されてしまいそうです。そして他のことを考える前に理想のプランを決めて力尽きてしまうんじゃないか、そんな感じに思いますね。
S:それはちょっと困りますよね。
そういった意味では先ほどのプランですと、2階リビングにして、1階は玄関に入ったらワンルームとかもいいなあ、と思います。ある意味プランは住んでから考える。子供や家族の変化に合わせて、間仕切り壁を立ち上げたりしてね。
みなさん、壁を立ち上げるってすごいと思うかもしれませんが、少ししっかりしたパーテーションくらいならば、日曜大工で出来ちゃうレベルなんですよね。
A:間取りって実は結構簡単に変えられるということを知ると、結構気が楽になりますよね。この間、とある資料館で実際、「こんな感じで壁を立ち上げたらいいんですよ」とイメージを志水さんに教えてもらって、なるほどこんな感じか、と腑に落ちました。
S:「受験生がいるから壁の位置を変えて広めの個室を作ろう」、「ファミリークロゼットを作ってみようか」、そんな感じに出来るといいですよね。
一生その家に住むと考えると、可変させながら家中を使い回す、使い倒す、そういう家との関わり方はあっても良い。今のことばかりを考えすぎないって大事です。
A:あ、失敗した、と思ったら変えられるくらいだといいですよね。
S:ほんと、それくらいでいいです。
A:例えば、洗濯はランドリールームがあって、ごちゃごちゃが誰からも見えないようにお母さんが家事をする場だったとします。もし働くお母さんがフルタイムでお父さんより働くようになったらどうする?
見えない家事って置き去りにされがちですので、見える化して家族みんなで手伝ったほうがいいと思うんですよね。家族の形が変わった、じゃあどうするか、みたいに考えられたら、自分のライフスタイルに家が合わせてくれたら、家への愛着ももっと湧くと思うんです。
S:オフィスみたいに、ここ数年はこのレイアウトで行こうと家族で相談して決めるのも面白いですよね。
A:それインテリア好きとしては、たまらないですね。テーブルの向き一つ変えるだけで、気分が変わりますからね、家具も定位置を決め込まないほうが発見があるんですよね。家族イベントでインテリアを変えられたらいいです。
S:レイアウト変更の時に、家具を一つ買ってみる。よかったとか悪かったとか、話し合ってみるのも楽しいですよね。
A:名作椅子を一つ買うのもすごく豊かだと思いますし、IKEAなどもあるので少し冒険して斬新なデザインに挑戦してみる、とかもできますね。ですからね、間取りにとらわれすぎるって本当に勿体無い。
S:本当にね、間取りっていかようにもなるんですよ。それよりもね、話題にも上がらないけど、換気とか光熱費とかメンテナンスとか、、、後でボディブローのように効いてくることについて前もって知って、本質を理解して、優先順位をきちんと考える、そのほうが重要だと、と言いたくてこういう話をずっとしてるんです。
家に関しては、少し知識があった亜紀さんも「えー知らなかった!」ということ多かったでしょう?そして知ってしまったら「間取りよりも大事なことがある」というようになった、笑。
A:本当に。間取りって健康とかには直結しないと思うんですけれど、今勉強している換気はアレルギーなどの健康問題に直結するということがわかって意識がずいぶん変わったかな、と思います。
間取りは、住んでる人が気分が上がるか上がらないかということだったり、他人を呼んだ時に、どう見て!っていい気分になれるかどうかみたいな問題だと思うんですよね。そんなことは今となっては結構どうでもいい話で。。。
お化粧より、素顔のクオリティが大事みたいなことに尽きると思うんですよね。
はあ、どんどん間取りの優先順位が下がっていくー。
S:笑。でもそうなれるっていうのは30坪くらいの家全体が、耐震がしっかりして家の中どこに行っても安全、どこに行っても暑い寒いがなく快適でという状況だからなんですよね。
プランがどうでも良くなれる。
A:ああ、そうかそうか、逆説的ですけれど、そうですね。
S:どこも快適だから、どこでも自分の素敵な居場所になる。季節だったり、年を経るごとに居場所は変わることができるわけです。
A:本当にそうですね、、ソファをドーンと置いてしまったら移動はできないけれど、一人掛け用の椅子であれば、それを持って夏はここ、冬はあすこと移動できるんですもんね。
S:今ねえ、ソファに座って家族4人で映画を観るとかないですからねえ、
A:そんなことほぼしないと、実感を持って言えます。
S:でも、なんだかその絵を想像してデザインしている日本のリビングですよね。
A:間取りでこだわる場所があるとしたら、食べる場所かなと思います。映画は一緒に見ないけれど、食事は一緒にする機会は多いですし、食事にまつわることは多岐にわたるので、もし今自分で家を建てるとしたらそこだけは少しこだわって、あとはお任せしようと思ってますね。
S:ダイニングってね、テーブルひとつとってもいろんな面白さってあると思いますね。テーブルの高さとか、椅子の座りごごちとかで全然変わりますからね。
A:テーブルや椅子を低くして、床座に近い状態の暮らし方をする、とかやってみたいですね。そうしたらキッチンも目線を合わせたいから土間的な場所に作るのかなあ、とかね。家の中心をリビングより、ダイニングにした考え方が好きだな、と思います。
S:その辺の価値観ももっと多様化して良いですよね。
A:まとまらないですけれど、、、
S:まとまる話でもないからいいんじゃないですか、笑。
まとめ的に言えば、間取りも大事ですけれど、それ以外にも大事なことがあるということをみなさんに知って、勉強していただき、その上で許される予算の中で優先順位をちゃんと決めて割り振っていくというのが、後悔のない家づくりになると思うんですよね。
A:ですよねえ、なんというか、目に見えてくるものが、インテリアのテイストだったり、間取りだったりして、、他のことがあることに気が付けないですよね。家といえば間取りという感じで育ってきちゃった感があります。
S:家ってそんなもんじゃない、そう言っていきたいですね。
A:あ、個人的にはどんな素敵なインテリアでも飽きるというか、変えたくなる時が来ると思うんですよね。ミッドセンチュリー、北欧系などのように時代のトレンド、みたいなのが変わりますよね。
素敵なトレンドが目に入ってきたら、そちらが良いなーと思うのは当然なことで。。先ほどの変化の話と被りますけれど、そういうふうに変えたくなることはある、と思って家づくりしたほうが、落ち着いていられますよね。
S:うんうん、ですから、建物にはあまりデザインやテイストをこだわりすぎずにね、予算があったらやってもいいですけれど、基本はプレーンなものにしておくのが良いと思うんですよ。
季節モノで変化をつける洋服みたいな感じですよね。
A:ベーシックなものを身につけつつ、トレンドアイテムを1点投入する、洋服的に考えればいいんですね。
S:プランの話からは外れますけれど、外観もあんまり頑張りすぎると10年経つと、痛々しくもなりますからね。そんな中で、すごく時間が経っても、安心していいなあ、って思って見られるのは、古い民家だったりしますよね。
A:確かに。
S:安定した大きさというか、優しさというか、安心感というか、、変わらないよさってありますよね。
A:それって意外と子供レベルでもわかると思うんですよね。最近、「木の外壁の家っていいね」みたいな話を子どもたち同士がしているのを聞いてですね、、、
S:笑
A:何をもっていいねと言っているのかは本人たちもわかっていないと思うんですけれど、「いい感じがする」というのは分かるんですよね。DNAなのかな?木の外壁で、キラキラしすぎてない家の良さって、定番の上質な服の良さに通じるものがありますよね。
S:ですねー。定番服を着つつ、今感は小物で投入、家もそんな感じでどうでしょうか?
A:時代の空気感は小物で味付け、ですね。初めての家づくりだと、間取りにフォーカスしがちなのは分かるんですけれど、できたら肩の力を抜いてのぞみたいものです。
S:キッチンくらいならそれほど無理なく移動できるし、大体のものは移動できるんです、移動する前提で作っておくこともできる。若い時は2階リビングでも、歳をとったら、生活の場を1Fにまとめることだってできるんです。老後のことを考えて、若い時から日の当たらない1Fをリビングにしてるなんてもったいないですよ。
A:本当にそうですね。今日もありがとうございました。