家とお金に関する雑談
A:こんにちは。「今日は家づくりとお金の話をしよう」という感じではいたのですが、頭の中がまだ夏休みモードなので、いろいろ雑談で始めて良いですか?
S:いいですよ。
A:家づくりの仕事に関わって1年半くらい、施主側の気持ちが強かった私ですが、作り手側の立場もわかるようになってきて、最近いろいろ迷うんですよね。
ウッドショックや物価高騰、さらにはコロナ禍で移住が促進されて湘南地域の土地の値段も上がり、家づくりがより高いものになってきているので、「今、土地を買って家を建てて良い時なの?」って聞かれると明快に答えることができなくて。
S:それはよくある質問ですよね。まず土地を買う件ですけれど、僕自身は鎌倉や京都といった人気のエリアは数年ではそうそう地価は下がらないんじゃないかな?と思っています。常にそこに住みたい人がいるエリアですし、海外の方にも人気がありますからね。
次に家を建てる件ですけれど、建てる時期のメリットデメリットを論じることはあまり意味がないかなと。その家族にとって、家が欲しいと思った時期が、建て時なんです。子育てを快適な家で行いたいと思って家を建てることを希望するなら、今建てないとあっという間に子育ての時期は終わってしまいます。老後を新しい家で過ごしたいと思うなら、家を建てようという元気があるうちに建てないと。
A:確かにそうですね。私の両親は63歳で高性能住宅を建て、今75歳くらいになりました。あの時に建ててよかった、今じゃ絶対に気力体力が追いつかないと言ってます。うちの両親の家を建て替えた理由が、快適な性能をもつ家で子に頼らずに元気な老後を過ごすため、娘たち(私と妹)が孫たちを連れて帰りたいと思う場所を作るという2点でしたので、それが実現されている今、非常に満足度は高そうです。
S:そう、建てたい目的と、建てた後の生活が合致すれば家の建築費が500万高くなったとしても大きな問題じゃ無くなると思います。
極端なことを言えば、500万建築コストが上がってしまうならその分5坪程度広さを小さくすればいいのです。
A:って志水さんはよく言われますよね。でも実際その5坪に抵抗がある方も結構いると思うんです。収納が無くなるとか、せせこましい感じになるんじゃないか?とか。広さある家で生まれ育った方が特にそう言われる気がします。
S:うーん、広さと広がりとは違うんですよね。いわゆる4LDK140平米の家の広さと比べると、高性能住宅1LDK90平米というのは数字的には小さくなります。けれど広がりを感じる作り方はできます。平米というのは床面積しかあらわしてません、家というのは本来容積で判断するものです。
A:広さと広がりは違うというのは名言ですね!確かに、私も床面積だけで家の広さを判断していましたけれど、視覚的な広がりはとても大事ですよね。収納だって高さを活かせばかなり変わりますし。
S:高基礎にして床下にスペースを作ることもできますし、いかようにでもなりますよ。許せる範囲で室内を簡便に作ることで価格を下げることも可能です。
A:例えば?
S:真新しい最新のシステムキッチンを入れるのではなく、ステンレス製の業務用キッチンの中古を導入するとか、間仕切壁やドアを極力作らず布などで仕切るとか。
A:なるほどねえ。この間友人宅に遊びに行ったら、カフェ用のイタリアのハイエンドエスプレッソマシーンが、手作り感あるラフなキッチンカウンターの上に置いてありました。かっこいいメカと素朴なカウンターの対比が素敵だ、と思いましたね。好きなものを大事にした空間って居心地がいいですよね。平均的に予算を配分するのではなく、これぞというものに一点投入するのも面白いなあと思います。
S:だと思いますよ。
A:話は少し変わりますが、最近はyoutubeなどで、かなり家づくりの勉強ができるようになっていますよね。
S:家の性能などの知識を、youtubeで勉強できるようになったのは素晴らしいですが、それを実際の予算金額でどう展開していくか、バランスよく考えるのはとても難易度が高いと思います。
A:なるほど、その地域にあった性能を担保しつつ、デザイン性もあり、長い目で見たメンテナンスも容易、といったいろいろな要素をまとめ上げていくわけですからね。気密や断熱の数値だけで良い家かどうかは測れないですからね。
S:コストに対してバランスの良い家が作れる、というのが我々の良さだと僕は自負しています。
A:地方の勢いのあるビルダーさんや、高性能住宅を作る建築家などが発信を始めていて、個人的にはあっという間にそういう家が良い家として広まっていくのかなあ、と思っているのですが、志水さん的にはどうですか?
S:50年100年というスパンなら別ですが、ここ5年10年の話ではそういうことは起こらないと思いますね。やっぱりまだまだ家はハウスメーカーで建てるものという認識が強いです。
A:なぜでしょうか?
S:戦後、高度経済成長の時代に大量に家が必要になった時、お客さんが思ったようなクオリティの家を建てられる工務店があまりいなかったのがそもそも始まりかもしれないですね。なら、工場生産の一律の品質をもつメーカーに頼もうという風潮がついてしまった。
A:確かに思い返せば、私も高校生の時に阪神大震災があって、その後に「ハウスメーカーの家は強い」みたいなイメージがついたな、と思います。今となっては設計の工法よりも構造計算をしているかが大事だとわかりますけれど。
S:長く染みついてしまった考えはなかなか変えにくいですからね。実際日本の経済が右肩上がりの時は、ハウスメーカーの作るたくさん部屋数のある、庭付きの広い家が良い家だったのでしょう。専業主婦の奥さんが家のことを全て取り仕切り、旦那さんは外で稼いでくる。
でも、今は違いますよね。男性も女性も関係なく、仕事や家事をする。そういう時代における良い家って何か、常に考えておきたいなと思います。
A:あと、工務店や設計士と家を作るのは面倒っていう方もいますよね。
S:それは一定数いらっしゃるみたいですね。忙しいからそんな話などしてられないってね。
A:性能の話、お金の話、デザインの話、設備の話など、多岐にわたるから全部理解しようとすると疲れてしまい、丸投げしたくなる気持ち、わからなくないです。全部お任せで丸投げしても安心安全なものを作ってくれる信頼できる家づくりのパートナーを見つけることは大事ですね。
S:僕ら自身もお任せでって言ってもらえるのが一番なんです、そう言ってもらえるように信頼関係を築いていきたいですね。
A:迷える私の質問を志水さんにぶつけて、スッキリしました。たまにはこういう回もいいですね、ありがとうございました。