つぶやくふたり

talk about housing

スピード感のある調査と提案

A:今回は、8月にリノベーション工事が完了した中古住宅の話をしようと思います。
中古住宅を購入してリノベーションをしよう、と考えている人の参考になれば幸いです。

S:ついこの間お引越しが終わったばかりですね、物件を見つけてから約3ヶ月で引越しが完了しました。

A:はい。決まってからは早かったです。
お施主のY様は鎌倉で土地を探していらっしゃいましたが、なかなかピンとくるものに出会わずにいて。
今年に入ってからは、中古物件まで範囲を広げて探されていました。
5月に「今のすまいから程近い山の上の住宅街に、築30年の軽量鉄骨造の中古物件がある」と不動産屋さんからご連絡があり、まずは私も一緒に見に行きました。お施主様たちも「これは初めてピンときた物件です」と。

S:亜紀さんが、最初に見た時にどんな印象でしたか?

A:土地が高台にあるため、抜け感があり、風もそよそよなびいていて、良い場所だなと思いました。
床下もカラッとしていて家の傷みも少なそうでした。
程よい広さのお庭があり、山の緑が遠くに見渡せるのがよく、崖の土砂災害や水害のハザードにかかっていないことも、安心。
価格も予算内でしたし、建物はすでにバランスが良い間取りで、最小限のレイアウト変更で住むことができそうと感じました。

S:僕も資料と写真をもらって良いなと思いました。
少し間取りに手を加えれば、あとは快適に住むための性能向上の工事に予算を費やすことができそうだなと。

A:初めて物件を購入されるお客様は、じっくり考えたいと思うのは当然なのですが、良い物件は、鎌倉ではすぐ動いてしまうのでスピード感も大事ですよね。

2日後には施工をお願いする工務店さんと建物の調査をして、予算内で性能向上リノベーションができそうだという確認が取れました。

S:私たちが会員になっている新住協(新木造住宅技術研究協議会の略)の工務店さんで、常に研究と実践をされている方です。何ができて、どれぐらいの費用がかかるか、その場で回答をいただけました。

軽量鉄骨造のリノベーションを何件かやられていたのも良かったです。ハウスメーカーさんの軽量鉄骨造の家って、木造を専門にしている工務店さんには未知の世界です。責任問題もあるのでなかなか手が出せないんです。
おそらく、それが今回の物件がすぐに他の検討者さんに動かなかった理由だと思います。

A:なるほど。
今回は、工務店さんの事前調査で状態が良いことがわかっていたのと、時間的余裕がなかったので、購入前に建物インスペクションを実施せず、購入後に行いました。購入後であっても、正確な情報を把握できました。将来的に売却するようなことがあっても、建物インスペクションの結果と私たちが実施したリノベーションの内容があれば安心して売却できると思います。


窓の断熱について

A:今回のリノベーション、ポイントをいくつか志水さんの方からお願いします。

S:予算の中で、最低限必要な要素は網羅することができました。

一つ目は外壁や屋根の塗装です。建物の寿命にもかかわる重要な要素です。
二つ目は、設備の更新です。キッチン・お風呂・トイレなどの水回りやガス・電気設備など、ほぼすべて更新できました。
この二つの要素は、住むため・長く住むための最低限の工事ですね。
三つ目は、内装のレイアウト変更工事や壁紙の張り替え等の工事です。先ほど話したように、レイアウト変更は最小限で済みました。

最後が、性能向上のリノベーション工事です。
地域や周辺環境によってどこまで性能を上げるか変わってきますが、今回は鎌倉がある省エネ基準地域区分の6地域で最低限必要とされるレベルの窓・天井裏・床の断熱工事ができました。 

A:窓断熱、興味深かったです。

S:築30年、窓はアルミサッシのシングルガラスで暑さがダイレクトに入ってきていました。
ただ、全部の窓に内窓をつけて二重窓化すると予算が上がってしまうので、みたくないものが見える窓や必要のない窓は、閉じることにしました。

A:この発想は正直びっくりしました。工務店さんと志水さんが、サクサクと必要のない窓にバッテンを入れていきましたよね。

S:この時代の家は窓が多くて明るいのですが、隣の家の壁や塀しか見えない窓もいくつかありました。光を取り入れる、風を通す、窓の役割には大切なことも多いのですが、周囲の環境は変化しますし、特に近年の夏は窓を開けて過ごせるというレベルの気温ではなく、窓を閉めてエアコンで快適な室内環境を作る必要がありますよね。

A:特に鎌倉は湿度が高いので、窓を開けると湿気が入ってしまいますね。
梅雨と夏の湿度の高い時期は窓を閉めてエアコンの除湿機能に頼るのが、我が家の答えです。(参照コラム

S:そうですね。というわけで、18箇所あった窓の7箇所窓を封鎖しました。そのうちの1つは天窓です。

A:窓はネオマフォームという断熱材で閉じました。
閉じた後にサーモカメラで見たのですが、バッチリ断熱されています。
実は窓を閉じることに少し抵抗があったのですが、出来上がってみると、外の景色が見えすぎないことで落ち着きが出る、壁が広くなって絵を飾ったりするのに有効、というメリットもあることに気がつきました。

左:窓を室内側から断熱材で封鎖、中:サーモカメラで見るとガラスの部分が壁と同じぐらいの色になっている。窓の両脇の太い黄色い部分は鉄骨の柱で、アルミの窓枠と鉄骨の柱が温度が高い。右:閉じた窓を外から見たところ

S:そうですね。正しく選べば、窓が無いことで不便を感じる点は少ないと思いますね。
窓断熱をする前に、本当に必要な窓かどうか検討してみたほうが良いと思います。

A:残りの窓は内窓をつけて2重窓にしました(お風呂の窓のみカバー工法)、威力ありますね。
気温が34度だった真夏の11時、日が当たる時間帯でも内窓の表面温度は周囲の壁と変わらないくらいです。一方で外窓の表面温度は体温より高かったです。

左:外窓の表面温度、右:新に新設した内窓の表面温度


S:この時は室温が27.5度と少し高めでしたが、お施主さんがエアコンの使い方に慣れていけば、さらに低くなると思います。

家の中で、最も熱が外に逃げやすく、また外から熱が入り込みやすいのが窓です。冬は室外に流出する熱の53%が窓を経由したもので、夏場は室内に流入する熱の70%のが窓を経由したもの、と言われています。


A:ほとんど、、、窓。

S:そうなんですよ。窓断熱の大切さがわかりますよね。

A:夏の暑い日差しがそそぐリビングの窓辺でお子さん達が普通に遊んでいました。
また、窓屋さんの配慮で、和室の内窓は少し高価な障子デザインのものを入れていただき、和室の雰囲気を壊さずに内窓を取り付けることができました。庭の木々の揺れる影を目にすることができ、穏やかな気持ちになるとお施主様から感想をいただいています。

S:よかったです。今回は窓を中心にお話をしましたが、次回は床や天井の断熱についてお話ししましょう。

和室の内窓、障子風

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