つぶやくふたり

talk about housing

A(亜紀): 今回は、少し特別なリノベーションのお話を。お施主様は私の友人でもあるご夫婦です。 振り返ってみても、あの平屋に出会えたことは、お二人にとっても、私にとっても、本当に幸運なことだったなとしみじみ思います。

S(夫): 本当にそうだね。築45年で150平米というかなり大きな平屋なんだけど、住宅街の中でも一番の高台に建っていてとにかく眺望が素晴らしくて。

M(妻): もともと音楽家の方が建てたお家ということもあって、漆喰の壁や無垢の床とか、素材の使い方がすごく贅沢だったよね。ここ数年、中古物件を探していた中でも、ポテンシャルの高さが際立ってた。

A: アンティークな雰囲気が好きなお二人だからこそ、残せるものはできるだけ残して活かす方針にしましたよね。立派な玄関や室内のドア、15年くらい前に一度リノベーションされていたI型キッチンの部分はそのまま活かして、代わりに食器棚と作業台を兼ねた大きなアイランドカウンターを新設しました。

M: このカウンターが本当に使いやすくて大正解!予算の関係で古いまま残したトイレも、遊びに来た友人たちからは「レトロで可愛い!」ってすごく好評で(笑)。

リビングダイニングと竣工時のレトロな雰囲気を残した洗面台

A: 嬉しい誤算でしたね(笑)。水回りといえば、洗面所とお風呂もこだわりましたよね。お風呂は掃除のしやすさや、快適性を重視して最新のユニットバスを選びつつ、洗面所はタイルでまとめて。価格を抑えながらも、すごく素敵な空間になりました。

S: うん、あそこはとても気に入ってるよ。

A: ただ、ユニットバスのパネルの色合わせには正直驚かされました(笑)。私、あんなに斬新な組み合わせを見たことがなくて。

M: あはは、亜紀ちゃん、最初は「えっ、これとこれ合わせるの?」ってちょっと戸惑ってたもんね(笑)。

A: ええ(笑)。でも、実際に組み上がってみたら……これがもう大正解!空間にピタッとハマっていて、お二人のセンスの良さに改めて脱帽しました。

黒い浴槽が斬新に感じましたが、レトロなタイルと相性良いです。

「普通に暮らしたら絶対に寒い」プロの直感と外断熱

A: 空間の魅力を引き継ぎつつ、間取りとしては一部の壁を抜いたり、水回りにユーティリティを追加する程度の最小限の変更で済みました。ただ、私たちがデザイン以上に「絶対にやりましょう」と強くお勧めしたのが「性能の向上」でした。

S: ぶっちゃけて言うと、僕ら夫婦、最初は断熱なんて全く興味なかったんだよね(笑)。

M: そうそう(笑)。かっこよければいい派。でもそこまで言うなら間違いないだろうって。「騙されたつもりで話に乗ろう!」って決めたの。

A: 最高の褒め言葉として受け取っておきます(笑)。実は、最初にこの家を見た時、「このまま普通に暮らしたら、すごく寒いだろうな」と心配したんです。あのリビング、絶景を楽しむために北側の崖に向かって大きく開いているでしょう?

S: うん、北向きだから日差しがサンサンと入るわけじゃないんだよね。

A: 先代のオーナーさんは、壁に大きな温水暖房パネルを設置して寒さを凌いでいたようですが、現代のエネルギー価格でそれをフル稼働させたら、電気代がとんでもないことになってしまいます。だからこそ、外壁のクラック(ひび割れ)補修も兼ねて、基礎から外壁全体をすっぽり包む「外断熱」が絶対に一番良いという判断でした。

S: でも正直、最初の見積もりを見た時はちょっと悩んだよ(笑)。外断熱って決して安い工事じゃないからね。

M: うんうん。300万円程度、リノベーション工事全体の1割くらいを占める金額だったもんね。決断するにはけっこう勇気がいったよ。

A: そうですよね。決して安い金額ではないので、お二人の決断には本当に感謝しています。でも、あの時もお話ししましたが、これからこのお家で30年暮らすと考えた時の「トータルコスト」なんです。

S: そうそう。普通の塗装のままだと、その間に最低でも2回は足場を組んで外壁塗装をやり直さなきゃいけないって聞いて。

A: はい。外壁塗装はおそらく一回150万〜200万くらいかかります。その将来の修繕費と、毎月かかる日々の電気代、そして何より「一年中ストレスなく快適に暮らせる」という価値をひっくるめて計算すると、実は外断熱にしてしまったほうが、長い目で見ればトータルの費用は抑えられるんですよ。

M: その説明ですごく腑に落ちたんだよね。それに結果的に、外観もすごく綺麗になったし!とても築45年とは思えない見栄えになって驚いた!

A: 仕上げの塗装には、ドイツのSTO(シュトー)社の外壁塗装材を使ったんです。撥水効果がすごく高くて、汚れがついても雨や水でサッと流すだけで綺麗になるので、今後のメンテナンスもとても楽になりますよ。

上段:左から施工前、施工中、断熱材を全面張ったところ。
下段:STOの塗料を塗ったあと。すっかり綺麗になりました。

S: そういえば、工事中にご近所の方に声をかけられたんだ。「古い家だから、壊してまた新しい家になってしまうのかと心配していたけれど、直して住んでくれるなんてありがたい」って。

A: それは嬉しい話ですね!街並みの記憶を残すという意味でも、この建物を引き継げたのは本当に良かったです。
断熱強化という点では、窓にもメリハリをつけましたよね。リビングにあるドイツのシューコー社の大型窓は、断熱性能は今の基準からすると低めだけれど、デザインがお二人のツボにハマっていたのであえて残すことに。

S: あの窓の存在感は、やっぱりこの家の主役だからね。

A: その代わり、他の窓はすべて滑り出しタイプの「高性能のペアガラス窓」に総入れ替えして、家全体の断熱性をグッと底上げしました。
施工中も、お二人のスタンスが本当に男前。予算オーバーしそうなので一部減額案を提案しても、「変えたくないところは絶対に変えない!」と、増額をスッパリ受け入れてくださって。

M: せっかくなら妥協したくなかったから。現場にもちょくちょく遊びに行かせてもらったよね。

A: そう!お二人が頻繁に顔を出して、職人さんたちとコミュニケーションを取ってくれたおかげで、現場の職人一同、すっかりお二人のファンになっていましたよ。「信じて任せてくれるお施主様のためなら」って。

S: 職人さんたち、本当にいい人ばかりだったよね。

A: 小さなエピソードのご紹介ですが、このお家のもともとの無垢の床材がすごく素晴らしいから、大工さんが「なるべく無駄にしたくない」と言って、色々な箇所の補修に丁寧に再利用してくれましたよね。

M: うんうん、直したところもすごく自然だった!

A: 玄関に置かれている大型鏡の受け台、あれも余った床材を使って大工さんが作ってくれたささやかなプレゼント。

M: ねー、ほんと嬉しい。空間にぴったり馴染んでいるよね!すごくお気に入り。

S: 嬉しいよね。ますますこの家に愛着が湧くよ。

大工さんお手製の鏡の受け台。


湿度80%超の梅雨に実感した、圧倒的な「ストレスフリー」

A: そうして完成したお家ですが、住み始めてみていかがですか? まだ本格的な厳しい夏も冬も体験していない時期ですが。

S: いやもう、一番大きな感想は「断熱強化(外断熱と窓の交換)をして本当に良かった!!」ってこと。

M: とにかく室内が快適なの。室内の体感にストレスがないことが、こんなにも心地いいなんて驚きだった。今まで体験したことのない感覚なの。

S: 今ちょうど梅雨の時期でしょ? 今年は気温もさほど高くないから窓を開けているのだけど、外の湿度は90%台なのに、室内はだいたいエアコンをつけずに60%前半をキープしてるんだよ。僕、毎日「switchbot(温湿度計)」の結果をスマホで確認するのがすっかり楽しみになっちゃって(笑)。

5月の雨の日の温湿度。下の段の数字は外

M: 来客にも、「こんなに湿度が高い時期なのに、床が全然ベトベトしないね」「空気がカラッとしてる!」ってすごく驚かれるの。

A: すごい結果だよね。実はこれ、いくつかの理由が重なっているからだろうと志水さんとは話してます。
まず、風がよく通る高台の立地であるということと、150平米という大きな住宅なので「空気の体積(気積)」が大きく、外の湿気の影響を受けにくいこと。
次に、基礎から外壁まで連続して外断熱を行ったことで、窓だけでなく「壁自体」の隙間が減って、湿った外気の流入が大幅に減ったこと。

S: なるほど、ただ壁が分厚くなっただけじゃないんだね。

A: さらに、もう一つ大きな隠し味があって。このお家、元々音楽家の方が建てたので、防音のために「屋根の下」に断熱材がしっかり入っていたんです。

M: あ、そうだったんだ!

A: ええ。今回はその既存の断熱を活かしつつ、さらに「天井側」からもネオマフォームという高性能な断熱材を貼って蓋をしました。つまり、上からの熱や湿気をダブルの断熱層でブロックしているんです。これも今の快適さに大きく貢献していますね。

S: へえー!防音のための構造が、まさかそんなところで役に立っているとは。

A: 仕上げに以前の建築を踏襲して自然素材を多く使ったことも大きいです。壊した壁は漆喰を塗り直し、天井もビニールクロスではなくベニヤの塗装仕上げにしました。素材自体がしっかり呼吸してくれているのだろうと。数値化は難しいけど、なんとなく心地いというこの感じ、私もすごく勉強になってます。しばらく経過を観測させてください。

M: もちろん!私たち、本当に「騙されて」大正解だったね(笑)。

S: 間違いない(笑)。これから夏本番、そして冬を迎えるのが本当に楽しみだよ。もし、この断熱性能の威力を体験したいって人がいたら、いつでも言って!僕らが熱弁してご案内するから!

A: なんて頼もしい! その時はぜひ、ご夫婦揃ってのガイドをよろしくお願いしますね。

関連記事一覧