つぶやくふたり

talk about housing

A:去年の夏の終わりに、エアコンの大掃除をしました。引っ越して丸2年使った壁掛けエアコンも床置きエアコンも、なかなかに汚れていました。
掃除をしてくれたのは夫ですが、機械を分解したり、また戻したり、やりにくくて結構手間がかかる…。私一人では無理だし、夫婦とも年取ったらできないなあ、と感じました。

H:そう、エアコンは冷房を使っている間に機械の中で、結露を起こしていまして。運転を停止した瞬間に機械の中の空気の流れが止まるのでカビが繁殖すると言われてますね。

A:なるほど、エアコンは常時運転の方がカビ対策になるんですね。あのカビを見ちゃうと、ほんとエアコンは1−2台くらいで小まめにメンテナンスすべきだなあって思います。

H:エアコンのカビという観点でいうと、換気と空調が一緒になっている全館空調システムの中には、新鮮な空気を送る経路の途中にエアコン本体が組み込まれているタイプがあります。よくみる壁掛けのエアコンではなく、天井に埋設するタイプですが、エアコンの中は常に新鮮な空気が通風されているため、エアコンがカビないのです。

A:え、冷房をしていてもかびない、、あ、そうか、そもそもをダクトを通して24時間エアコンに送り込まれている空気が、フィルタリングされた綺麗な空気だからカビが繁殖する要素が入ってないということになるんですね。

H:まあ、そういうことです。何年経っても綺麗なままのエアコンの内部を見たことありますよ。導入のコストはかかりますが、カビをまき散らさない、きれいな空気を供給し続けることができるシステムを選ばれたほうがよいと思います。

S:第1種の換気システムに組み合わせたものに限らず、エアコンをずっと送風で動かしておけば内部はカビにくいとは言われてますよ。

H:室内に新鮮空気を送るダクトの中のカビ問題も、空気を通風しておけば起こり得ないはずです。

S:エアコンも、夏中運転しておいて、季節が変わる時には送風をしてよく内部を乾かしてから停止させるなどの工夫が必要ですね。

H:最近のエアコンはそういうのも自動でやるみたいですよ。

A:あ、うちの1番新しいエアコンはそのタイプですね。

H:というわけで、だいぶ換気の話からは外れましたが、、、

S:いえいえ、そういう話の方がむしろ興味がありますよね、亜紀さん?

A:ええ、すごく面白いです。
現実に起きているカビ問題の話と、第1種、第3種といった換気の話がリンクしていない、というのが今の家づくりに起きている問題な気もします。カビは良くないとカビキラーで掃除をしているけど、、、そもそもカビがどうして発生するのかよく理解していない。

S:むしろカビを繁殖させるような動きをしてしまったり。。。

A:そうなんですよ。アレルギーだってみんな苦しんでいるのに、空気の質を変えようって動きにはなっていないじゃないですか。いや、本当にこんなに生活に直結する話だったら、もっと大きな声で話したほうがいい話題ですよね、換気って。

H:換気にはメンテナンスがつきものだということも、きちんとユーザーさんには理解していただきたいです。

気密が高い住宅で強制的に換気を行うのは必然で、換気システムが24時間365日止まらずに機能している状態をキープしないといけないのは、すまう人の使命なんです。住宅の高性能化が進んでいるヨーロッパでは、その重要性がしっかりと認識されています。ユーザー側もメンテナンスするのは当たり前。面倒とかお金がかかるとかそういう意識はなくて、綺麗な空気を得るためには当然でしょ、という考え方。

A:うーん、面白い。色々質問していたら、半日くらいすぐ経ってしまいそうです。すみませんが、そろそろ私たちのプランに、スウェーデンの換気システムを入れたらどうなるか?という話に移らせてください。

プライベートゾーンの1F
キッチン、リビングダイニングなどパブリックゾーンである2F

H:これは第1種換気システムを入れています。2階のユーティリティに換気設備の本体がありまして、青のラインが新鮮空気の供給、赤のラインが室内の汚染空気を外に排出する経路で、冬場は暖められた室温がダクト内を通るということになります。この一定の温度をもつ空気がモーターに引っ張られて、本体に戻ります。

S:付け加えると、2階ユーティリティにある赤と青の丸の点からは真っ直ぐ1階の天井にダクトが伸びていて、1階の給気排気をおこなっています。

A:第3種換気になるとどうなりますか?

H:第3種換気だと、この青のダクトのラインが無くなって、それぞれの部屋に外気をきれいにろ過するフィルターが付いた穴(給気口)があいているということになります。

A:この図でトイレやお風呂にも赤の排気のラインが伸びていますね。ということは、局所換気は無いんですか?

H:これもスウェーデン式換気システムの特徴なんですけれど、お風呂やトイレも換気の経路に入れることができます。こういったことが可能な製品は市場ではあまりみないのですが、、、。そもそも断熱気密を最大限上げて、さらに換気で熱交換を選ぶということは、熱損失をできるだけ小さくしたいという理由からでしたよね?

A:確かに、、、局所換気があったら寒いトイレとお風呂になりそうです。

H:そう、トイレやお風呂を別系統の換気にすると、そこからの熱損失はかなりの量です。
特にお風呂場は温度・湿度がたくさん発生する場所です。それらを局所換気で排気してしまい熱交換の対象としないのは勿体無いので、全ての排気を1系統にまとめるようにできています。

A:すいません、初歩的な質問ですけれど。一種の場合、給気口のフィルターは外気を取り入れる建物の壁側にあるんですか?

H:屋外にフィルターを設けるタイプもありますが、こちらの場合はそうではなくて、外壁から取り入れて、取り込まれた先の機械の中にフィルターがあります。

A:なるほど、わかりやすい、この機械に全て集約されているんですね。これが第3種になると、壁に給気口が開いているから、熱損失はどれほど大きいものなんですか?

H:決まった量を確保するためにきちんと計算されて開けられた給気口であれば、熱損失は大きく無いはずです。必要にして最小限で、そして気流を感じない(風を感じない)程度の空気の流れを実現するためには、給気口の個数や位置について指針があります。けれど、明確な設計指針をもって換気設計されていることの方が少なく、曖昧な換気計画だったりすることも多く見られますねえ。

S:その辺りのグレーな感じ、だいぶわかってきました。

A:そうか、グレーなんですね。
この家の場合、お施主さんがそこまでハイスペックな換気に予算がかけられない、となったら第3種ダクト式換気システムになるわけですね。

H:それは良い選択だと思いますね。第1種、第3種の今まで話してきたようなメリットデメリット、長期メンテナンスなどを総合的に判断して第3種ダクト式を選ぶのであれば、鎌倉という土地にマッチした優れた選択と言えると思います。
換気システムは「トレンドだから」「みんながつけているから」で選ぶのではなくて、ユーザー自身がきちんと能動的に選ぶものであって欲しいですね。

A:ここまで話を聞いてきた今となっては、キッチン設備を選ぶのと同じくらい熱い思いで選びたいと思います。

S:僕は、鎌倉での標準仕様では第3種ダクト式で行こうと思っています。
じゃあデメリットってなんだというと、熱交換できないから冬に冷たい空気が入ってくる点で、それを色々なアイディアで解決していくということが必要になってきます。例えば外の空気が入ってきた瞬間にエアコンで温められるような場所に吸気口を設置するとか。

A:うーん、なるほど〜。ここで設計者の工夫の出番になるわけですね。すごいなあ、面白いなあ。

H:空気が1秒間に15cm以上動くような流速であれば、人は気流を感じます。暖房と冷房でも異なりますが。それ以下の流速であれば、人は空気が動いていることを感じません。先ほども少し触れましたが、そのような快適な空間にするために、給気口の数や形状などに対する工夫が、スウェーデンの換気システムにはよく見られます。

A:なるほど、メーカーの工夫も色々とあるわけですね。第3種換気の場合、お客さんがやることはこの給気口のフィルター掃除?

H:この場合、交換する、ですね。

S:1軒のいえで大体、7.8個ついているかな。

A:どうやって交換するんですか?

H:簡単です。パカっと給気口を外して中身を入れ替えるという感じ。お薦めするスウェーデンの特殊なフィルターは最長2年はもちますが、周囲の環境に左右されることが多いです。あとは機器本体のファンを水拭きや水洗いで埃をとる、その2点ですね。

A:3種のメンテナンスは、台所の換気扇よりずっと簡単そうで気が楽になりました。
イメージの世界なんですが、空気を綺麗にするって、塗り壁や自然素材などでしかできないような気がしていたんです。けれどこの最先端のフィルターや機械を通せば、科学的に空気を綺麗にできるんですね。

H:そうです。高性能住宅であれば、機械で換気する方法以外考えられません。

A:今話していて思い出したんですが、お友達の比較的新しいお家に遊びに行って、柔軟剤の匂いとか、ペットの匂いとか結構気になるな、と思う経験が何度かあって。換気ってどうなってるのだろう?とずっと気にはなっていたんですよね。
臭いが溜まるということは、カビの原因になる湿度なども溜まっているんでしょうね、、、知らないって怖いな。

新しくて、そこそこ気密性能も高くなっている現代のお家だからこそ、機械による計画換気をきちんと立てて、メンテナンスをしっかり行う重要性はきちんと理解したほうがいいですよね。

H:そうですねえ、良質な換気システムをきちんと動かす、まずそれですね。

その上で内装材に自然素材を使えば、空気を綺麗にしたり、調湿したりする効果を補完することはできるので、そういう素材を選ぶようにするといったことも大切だと思います。高性能住宅と自然素材というのはそういった意味では相性が良いのです。

A:科学と自然素材のハイブリットですね。うーん、深い。換気の話は他人事じゃないって思いますね。

S:設計者側も法律で決まっているからつけとけばいいんでしょ、という考え方の人も少なく無いんですよ。だから、お施主さんに換気の重要性がなかなか伝わらない。

H:お施主さんも、知らないから話題にもならないといったこともあります。住宅雑誌のアンケートなんかを見ると、まず家を建てる方が気にするのは間取りやソフト面で、換気が上位になることはありません。でも、住んでみると気になることの上位に換気や空調が上がってきます。

A:間取りは健康には直結しないけれど、換気は家族の健康に直結しますね。とても大事なことですので、みなさまに伝えられるようにしていきます。今日は皆様ありがとうございました。

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